このシリーズ、初めて読んだがツッコミどころ満載だと思う。主人公は森若沙名子27歳、中堅石鹸メーカー天天コーポレーションの経理部員。この作品は経理に関するミステリーの連作短編集になっており収録されているのは以下の4編。
〇第一話 取材は広報課を通してください
広報課のベテラン社員、皆瀬織子は、撮影のためと言って、高価なシャツを経費で落としていた。
〇第二話 女には女の戦いがある・・・・・・らしい・・・・・・
一言で言えば、いわゆるオツボネさまの話。
〇第三話 気にしないでいいよ、おごるから。出張手当入ったから!
営業部の山崎修一は、営業部の真のエースと言われていたが、いつも長めに出張を入れていた。
〇第四話 これは本当に経費で落ちません!
業務上横領の話。
さて、気になるところだが、 まず経理部の人数が、部長も含めて4人らしい。彼らが勤めているのが天天コーポレーションの本社だ。本社に何人いるかは分からないが、よくこの人数で回せるものだと思う。そしてこの巻を読む限り、部長の下には、課長や係長、主任と言った役職者はいない。
部の下に課がある部署もあるのに、たった4人で部と言うのも変だ。まあ、そんな会社もあるかもしれないという可能性は否定しないが、部長含めたった四人なら、別に部とせず、社長直属の課とか係にするという方法もある。
また、この会社では、出張旅費の精算まで経理部が関わっている。私が昔いた会社では、出張旅費の処理は所属長で完結して、領収証などの証票書類は所属長が保管。あとはシステムの方で行うという仕組みだ。つまり経理部員は他部署のこまごまとしたことは、各部署に押し付けて、ほとんど関わっていない。それでも経理部には何十人と人員がいた。本当に4人で回せるのなら、昔いた会社の経理の連中はよほど無能だということになってしまう(その可能性はあるが)。
もうひとつ感じたのは天天コーポレーションは、お金の管理についてかなりユルユルだということ。私も内部監査の経験がかなり長いが、この巻に出てきた例は全部アウトか果てしなくアウトに近い灰色だろう。わたしだったらみんなアウトにする。さすがに、第四話は完全にアウトだが、第二話は犯罪だし、第一話と第三話は、いくら部長が認めたとしても第三者からみればアウトだろう。この会社は内部監査などをやっていないのだろうか。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。