栞子と大輔が結婚7年目。二人の間に扉子が生まれもう6歳になっているが、まだ新シリーズには入っていないようで、Ⅱの文字はタイトルには入っていない。要するにこの本が第一部の最後に当たるのだろう。
収録されているのは4つの短編。いずれも、これまで出てきた人物に関する話を栞子が扉子に語るという体裁になっている。また、一部の締めくくりらしく、各話がこのシリーズにこれまで出てきた人に関するものだ。
〇第一話 北原白秋 与田準一編『からたちの花 北原白秋童話集』(新潮文庫)
坂口昌志は、刑務所を出た後、歳の離れた兄一家と絶縁していた。その昌志に子供が生まれたことから、出産祝いを娘の平尾由紀子に届けさせたが、その中に「からたちの花」があった。ところが、その歌詞が、昌志の妻のしのぶや由紀子の覚えている歌詞とは違っていた。
〇第二話 「俺と母さんの思い出の本」
急死した世界的なイラストレーター。彼は小さいころ母親に色々な習い事をさせられており、母親は彼の仕事に理解がなかった。彼が急死する前、家にある彼の持ち物を送ったところ、彼は「俺と母さんの思い出の本」と言ったという。しかし、母親には見当がつかない。果たして思い出の本とは?
〇第三話 佐々木丸美 『雪の断章』(講談社)
小菅奈緒は、彼女が志田先生と呼ぶホームレスから「雪の断章」をプレゼントされていた。志田は「雪の断章」を色々な人にプレゼントしていたが、誰も一冊。しかし奈緒には二冊なのだ。いったいなぜ。
〇第四話 内田百閒 『王様の背中』(樂波書院)
舞砂道具店の吉原孝二は、因縁のあるビブリア古書堂から「王様の背中」を売り主に成りすまして盗む。実は「王様の背中」は版画が全部揃っていると高値がつくのだ。
しかし、このシリーズを読むたびに思うのだが、良くこれだけ広範囲な本に関するネタを集めてくるものだと感心する。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。