タイトルから分かるように、モデルは色々と人間失格なあの人のようだ。そう昭和23年6月13日に心中したあの人のことだ。何度も自殺未遂や心中未遂を繰り返し、さんざん人に迷惑をかけ、とうとう成功したのはいいが、どういう訳か異世界・ザウバーベルグに転移する。なお、心中の相手は史実とはことなり「さっちゃん」と言う人物。この人は冒険者とかセンセーと呼ばれている。
もうひとつ異なることがある。史実では入水して心中しているが、この作品では、入水する前に心中相手といっしょにトラックに轢かれてしまう。異世界転生ものは、トラックに轢かれたことがきっかけというものが多い。実は、あのトラックこそ、「異世界当選トラック」だそうだ。
異世界ものといえば、女神様がチート能力を転生者や転移者に与えるのだが、この作品では女神様は出てこない。代わりに出てきたのがアネットと言う女性神官。
転位者なら超人的な力を持っていると言う設定が多いのだが、このセンセー、レベルが1、HPが1で状態がもうどく(カルモチン)。アネットも「こんなに弱い転移者を・・・見たことがない!!」と言うくらいだ。放っておくと、カルモチンをポリポリ。
でもセンセーにこの世界で生きる意味ができた。さっちゃんを探して、今度こそ心中をするつもりだ。最後に「さっちゃん」らしい人物が出てきたが、果たしてどのようにセンセーに絡んでくるのか。
それにしても、この作品、オマージュなのか、パロディなのか。とにかく笑える。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。