この作品は、「探偵少女アリサの事件簿」の2作目にあたる。主人公は綾羅木有紗という少女。若干10歳だが、父親の綾羅木孝三郎は全国的に有名な名(迷)探偵。母親のケイコ・アヤラギは世界的に有名な名探偵と言う、探偵界ではエリート中のエリートなのだ。
この両親の紹介の仕方の違いが分かるだろうか? 父親の方は名前を出してもあまり効果はないが、母親の名前を聞くと、水戸黄門の印籠のように、みな恐れ入ってしまうのだ。なにしろ、スイスのライヘンバッハの滝で悪徳教授と闘っていたり、オリエント急行で殺人事件を調べたりしているらしい。彼女はバリツ使いなのだろうか?なお、アリサはロリータ服が好きで、よく着ている。
このアリサの相棒となるのが、橘良太という三十一歳の青年。「なんでも屋タチバナ」を営んでいる。アリサの両親が忙しいので、お守り役としていつも引っ張り出されている。
この作品は、2人が解決する事件を扱ったもので、この巻に収録されているのは次の4編。
〇名探偵、夏休みに浮かれる
父親の知り合いの高橋一家と行った「奥多摩キャンプ村」で殺人事件が起こる。
〇怪盗、溝の口に参上す
怪盗ウェハースから「鳥男爵」という焼き鳥屋に、三代続く秘伝のタレをいただくという犯行予告が来た。
〇便利屋、運動会でしくじる
「なんでも屋タチバナ」に竹本洋輔という男から、娘の理奈の運動会風景をビデオに録るように依頼が入った。一方綾羅木孝三郎からもアリサをビデオに録ることを依頼された。理奈もアリサも襟糸(エリート)小に通っていたので、これ幸いと引き受けた橘だったが、運動会のさなかに窃盗事件が起こる。
〇名探偵、笑いの神に翻弄される
漫才コンビの「デニム&ルビィ」の片割れ、デニム内藤が殺害される。
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東川さんの作品らしく、殺人事件も出てくるのだがユーモラスな文体で書かれている。また小ネタも散らばっているので、ミステリーの好きな人は、元ネタを想像するのも楽しいだろう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。