戦後の混乱期を、麻雀の腕一つで駆け抜けた「坊や鉄」の物語。原作の阿佐田哲也は、色川武大(いろかわたけひろ)名でも小説を書いており、1978年には、直木賞も受賞しているが、阿佐田哲也の名前の方が有名ではないかと思う。何しろ、麻雀くらいしか男子大学生の娯楽が無い時代に、彼は「麻雀の神様」だったのだから。
ところで、この麻雀放浪記だが、主人公は坊や哲と呼ばれている。この「坊や」という呼び名からわかるようにまだ少年と言ってもいい年代だ。この坊や哲が、色々なバイニンと麻雀で戦っていくというのが基本的なストーリーである。
そして坊や哲に対抗するのが、ドサ健と呼ばれるバイニン。完全な悪役で、バイニン仲間もペテンにかけて金をむしり取るやつだ。
この作品の魅力は、様々なイカサマ技を使うバイニンを、坊や哲がどう破っていくかと言うところだろう。といっても坊や哲がイカサマ技を使わないという訳ではない。目には目、歯には歯なのだ。この3巻では「通し」と「積み込み」が登場する。通しとは仲間と組んで、色々な情報を教えあうような行為。積み込みとは、今のように自動で牌を摘んでくれるのではなく、手積みだった時代に、特定の牌を例えば自分の配牌となる場所に積むというイカサマだ。
この巻では、出目徳こと大場徳次郎とコンビを組むことになる。出目徳は積み込みの名人なのだが、このオジサン、絶対カツラだろうと、しょうもないところで、笑ってしまった。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。
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