曇、28度、85%
桜餅、柏餅、草餅、上用の和菓子とは違うけど、急に食べたくなります。お饅頭屋さんの和菓子。そして、食べたいなあと思う時に思い浮かべているのはその味ではありません。なんと桜餅の桜の葉っぱ、柏餅の柏の葉っぱ、草餅のヨモギの香りです。食べると言うことは、嗅覚に密接につながっていることを感じます。匂いに誘われて、思い出すのも食べ物の記憶です。
昨春、草餅が食べたくなりました。香港で手に入れた乾燥ヨモギは、日本のスーパーでも一番見かけるものでした。蒸し上げた餅の生地に戻したヨモギをしっかりと混ぜます。見た目は草餅でした。ところが、まだ暖かな餅の生地にヨモギを混ぜている時から、ヨモギが香らないことが気になっていました。口に含んでも、ヨモギは香りません。とてもがっかりしました。その乾燥ヨモギの袋の裏書きには中国産と書かれています。
野菜がおいしい、美味しくない、そのものの香りがするしない、これはきっと、その野菜、植物が生えている土地の土と水に関係するのかもしれません。
日本にいた頃は、まだ寒さの残る多摩川の土手でヨモギを摘みました。摘み草は不思議なもので、見える人と見えない人がいます。あのツクシですら、足元にあるのが見えない人がいます。ヨモギの緑が浅い先の方を摘むと、爪にも緑が滲んでいい香りです。この香りを菓子に使おうと思った人は、なんて素敵な感性の持ち主かしらとまで思います。もしかしたらよもぎの薬効を知っていたのかもしれません。摘んだヨモギは灰汁抜きをして、冷凍庫に保存しておきました。これでいつでも草餅が作れます。
先日、日本に帰ったとき、富澤商店で日本の乾燥ヨモギを見つけました。 青森産と書かれています。大事に持ち帰ってきました。袋にはヨモギを戻した汁も使ってくださいと書かれています。熱湯で戻すので、いい香りは戻し汁に移ってしまいます。書かれている通り、上新粉を捏ねるのに戻した汁を使います。ヨモギは蒸し上げてから混ぜてみました。いい香りです。
思ったより、濃い緑になりました。それでも、大満足。香りを大切にする日本に生まれて、ほんとに良かった。