雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

夏のお友達 ・ 小さな小さな物語 ( 1223 )

2019-12-08 15:01:02 | 小さな小さな物語 第二十一部

立秋の日が過ぎましたが、何の何の、猛暑は今が盛り、という感じです。
夏は暑い方が良いのでしょうし、日差しが厳しいのは当たり前といえばその通りなのですが、それにしても暑さにも程度があるのではないかと思ったりします。
来年の今ごろは、東京オリンピックの真っ最中だと思うのですが、世界各地から選手や観戦者を多数お迎えして、さて、この暑さ、本当に大丈夫なのでしょうか。
この日程は、開催都市の意向などほとんど通らないようで、商業オリンピックとしては開催地の気象条件など知ったことではないということなのでしょうか。
もしかすると、海外からの来訪者から暑さに対して苦情を言われますと、「日本人は、こんな時期に大きなスポーツ大会なんてしませんよ」と答えてしまわないか心配です。
もっとも、甲子園は、大熱戦の最中ですが。

さて、それはさておき、私たちは様々なものに季節を感じるものですが、夏、それも最も暑い盛りの季節を感じる物といえば、何をあげるのでしょうか。
つまり、「夏のお友達」といえる存在です。
私は、迷わず「セミ」を挙げます。
夏の訪れとともに初めて聞くセミの声は、何だか少しうれしいものですが、暑い盛り、その暑さを増すような鳴き声は、うんざりするものですが、セミもなかなか考えていて、腹立たしいほどの暑さになると、セミは鳴き止むようですよ。

セミは、世界中には、3000種ほどもいるそうで、わが国にも30数種いるそうです。多くは、「夏のお友達」として活躍するようですが、春や秋に姿を見せる物もいるようです。
ご承知のように、セミは長い地中生活のうえ地上に姿を現しますが、成虫としての地上生活はごく短く、一、二週間といわれることが多いですが、実際は一ヶ月程度は生存できるらしいのです。しかし、何分天敵が多く、人間に捕まえられて虫かごに入れられると、数日の命になってしまうようです。
わが国にいるセミの地中生活は、1~6年くらいだそうです。アブラゼミは6年だという説明書もあります。
北米には、素数セミ(周期セミ)という種類がいるそうで、13年ごとに大量発生する物が4種類と、17年ごとに大量発生する物が3種類いるそうです。それらは、地域ごとにどこかで毎年のように発生するらしいのですが、一つの地域では、13年あるいは17年ごとにしか姿を見せないそうです。しかも、一つの地域で13年セミと17年セミの両方がいる地域はほとんどないそうです。
素数セミが、繁殖のため地上に姿を現す期間を素数年ごとにしたのは、混血を避けるためだともいわれますが、もしそうだとすれば、誰が配慮したことなのでしょうか。

それにしても、セミは長い地中生活を送った後、危険いっぱいの地上に姿を現し子孫を残そうとするのでしょうが、その時間をどのように把握しているのでしょうか。遺伝子としてその行動パターが埋め込まれているのだ、といわれてしまうと、反論のしようもないのですが、長い長い地中生活の全てが、遺伝子に支配されているだけなのでしょうか。
17年セミの場合、おそらく卵の期間が半年ほど(翌年に幼虫になる種類が多いらしい)、地中生活が16年余り、そして地上生活は1か月足らず、という生涯を、水が流れるように遺伝子の指示だけで過ごしているのでしょうか。案外、人間の持つ時間とは違う物差しかもしれませんが、たとえ短くとも、大空に羽ばたく時を、指折り数えて(セミの幼虫の指がどんな物か知らないのですが)待ち続けているのではないでしょうか。
そう考えれば、限られた時間を懸命に鳴いているセミに、無事子孫を残してくれよと、祈りたいような気になるのです。
もっとも、鳴いているのは、オスだけだそうですが。

( 2019.08.10 )

 


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