雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

一夜寝にける ・ 万葉集の風景

2025-02-25 08:00:10 | 万葉集の風景

    『 一夜寝にける ・万葉集の風景 』 


 春の野に すみれ採みにと 来しわれぞ
         野をなつかしみ 一夜寝にける

             作者  山部赤人

( 巻8-1424 )
      はるののに すみれつみにと こしわれぞ
              のをなつかしみ ひとよねにける

意訳 「 春の野に すみれを摘もうと思って 来た私は 野を去りがたくなって 一夜野宿しました 」


* 作者の山部赤人(ヤマベノアカヒト・660 ? - 724 )は、万葉集を代表する歌人の一人です。万葉集には、長歌・短歌合わせて50首が採録されており、勅撰和歌集には全部で49首が選ばれています。
平安時代にはその評価はさらに高まり、紀貫之は古今和歌集の仮名序の中で、「人麿は赤人が上に立たむことかたく、赤人は人麿が下に立たむことかたくなむありける」と、柿本人麻呂と並び称される歌人と評価しています。
また、赤人は三十六歌仙の一人に選ばれていますが、柿本人麻呂と共に歌聖と称されることもあります。

* 赤人には、天皇を称える歌が多いことから、聖武天皇時代には宮廷に仕えていたと推定されます。ただ、その名前は正史には記録されていないようなので、六位以下の中下級の官人であったと考えられます。
その作風は、宮廷歌人的な色合いもありますが、叙景歌人としての評価が高いようです。
掲題の歌も、春の野を楽しむごく分かりやすい歌といえますが、個人的には、「いくらすみれを摘むのが楽しかったとしても、野宿などするものだろうか」という気持ちを持っています。
むしろ、この歌は、「すみれのように愛らしい人のもとで、一夜泊まってしまいましたよ」と受取りたいと思うのですが、少々邪推が過ぎますでしょうか。

       ☆   ☆   ☆


 


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1 コメント

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Unknown (tributary)
2025-02-25 16:56:21
邪推の通りかと邪推します
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