『よみがえれ思考力』の著者、ジェーン・ハーリーは、小中学校の教員、読みと学習のスペシャリスト、大学教員、小学校校長などのキャリアを持つ、国際的にも評価のある研究者です。
ジェーン・ハーリーは、子どもの学習について長年研究したのち、パターンというものが知能にとっては鍵であると確信するようになったそうです。
情報をパターン化するということは、それまで発達している心的な留め金で新しい情報を関連付け、まとめあげることです。
感覚レベルで入力された情報をまとめあげ、関係性を「見て取る」ことができる子どもたちは、思考と考えをまとめあげるのに手間取りません。
わたしは虹色教室で自閉症の子たちと接することが多いのですが、どの子も経験したことを意味へと落とし込めないために困っています。
学校での成績は抜群の一部のアスペルガー症候群の子らにしても、経験から意味をつむぎだすのは、非常に苦手なようです。
ジェーン・ハーリーも、自閉症児のひきこもりや異常なこだわりは、経験を意味のある形にまとめることができないことの障害から派生しており、
彼らは見たもの、聞いたもの、感じた物が混沌とした状態になっているのだと多くの専門家が考えていることを指摘しています。
ジェーン・ハーリーによると、早期教育の弊害とは、レベルの高い課題を、その脳の領域が発達する前にこなそうとすると、低次の神経系を使ったり、
自分で意味のパターンを創造するより、言われたことをただ受け取るような「習慣」がつくことに原因があるようです。
就学前の子に何より大切なのは、意味を探究し、自分で意味のパターンを創造するように援助することです。
虹色教室の活動でも、子どもが周りの世界を理解する方法を身につけること、自ら心的パターンを創造していくよう助けることを一番大切にしています。
といっても、そうした言葉だけでは、具体的にどんな関わりをしたらいいのかピンとこないですよね。
『よみがえれ思考力』の中にも、ほかのさまざまな幼児の発達を研究する本の中にも、ヒントやアドバイスが載ってはいますが、実際にそれを実行するとなると、戸惑う方も多いのではないかと感じています。
そこで、教室で心的パターンを創造するためにどんな働きかけをしていて、子どもがどのように成長していったのか、できるだけていねいに書いていこうと思っています。