虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

息子とおしゃべり 『就活を通じて感じたこと、考えたこと』1 

2019-10-17 20:06:44 | 息子とおしゃべり(ときどき娘)

来年の春から東京のIT業界での就職を予定している息子。

就職活動を続けるうちに、以前は気にもとめていなかったウェブの

無料文化に問題意識を持つようになったそうです。

何にどんな問題を感じたのかあれこれたずねるうちに、ずいぶん

長いおしゃべりになりました。

 

息子「無料市場が大きくなりすぎて、ローコストで楽しめる娯楽が幅をきかせているよね。

何年か前にお母さんが『フリー』(フリー<無料>からお金を生み出す新戦略)っていう本を

買ってきた頃は、まだ無料のものってめずらしかったけど、

今じゃ漫画やゲームはもちろん、創作の発表の場も知りたい情報も

無料で手に入るようになってる。ウェブ業界は今は無料を売りにしたビジネスモデルが

市場を大きく独占している。

自分がそういったものを利用する側だけの視点から見ていた頃は、

安ければ安いだけいいし、無料ならなおいいと思って

フリーでできるサービスを進んで探す立場だったけど、

これからウェブの世界で仕事をしていくことを

意識して就活するうちに、そのビジネスモデルの不健全さのようなものが

気になりだしてさ」

 

母(私)「不健全さ?」

 

息子 「無料で提供しているからみんなそれを使うってことを土台にしているがゆえの

構造の不健全さってことかな。無料サービスのもとは、広告費だから、

ウェブ上で何か創作するにしても、メインはいかにその中に広告を組み込んでいくか、途中でお金を

使わせるような形を仕込んでおくかっていう

創作物そのものの質とは関係ないところになるよね。

それは長い目で見ると、作る側も受ける側も不幸にしていくような気がするよ。

もし無料でなければ、いくつもの企業が

提供されている情報なり商品なりの質で独自性を出そうとするじゃん。

そうしたシンプルな構造で市場が成長しているなら、どの会社も、商品を使うお客さんが

幸せになれるような内容、つまり創るものの質だけに注意を向けられるわけでさ。

ネットの世界は本来いくらでも価値を生み出せる、あらゆるものを

無限に提供していける場なんだろうけど、そこが無料のビジネスで

独占されると、メインの仕事が生産することではなく

すでにある財産の取り合い、つまり

既存スペースの奪い合いと顧客の奪い合いになってしまうよ

無料でできることの域が発展し、有料が発展しないっていうのは、

創造的に新しいものを生み出していく力を奪うなぁて」

 

 

母 「確かにそうよね。これまで無料で利用できることに

何の疑問も感じずにきたけど。

 でも、それをなぜ就活していて感じたの?」

 

息子 「こうしたことを考え出したのは、

就活の準備を重ねるうちに、

お金を稼ぐ側、サービスを創り出す側の視点に移っていったこともあるけど、

ただ社会のあり方にどうのこうの言いたいっていうより、

これから自分がどういうポリシーを持って創っていきたいか

自分の中でじっくり考えを練っておきたいという思いが強いよ。

一昔前の映画監督とかいろんな分野のクリエイターは、売り上げとはかけ離れたところで

作品に魂を込めるといった感性があったよね」

 

母 「そう、そう」

 

息子 「そんな風に、作る側の人間が、作り出したものの価値を大事にしていくには

どうあるべきか、これから社会に出ていく個人として考えていきたいんだ。

社会を構成しているのは個人個人の働き方で、就活していても、

企業もけっこう、そうした個人のよりいい形の働き方を大事にしているし、

社会全体を幸せにしたくて、それぞれがビジョンを持ってる。

面接でも会社の上の方の役職の人ほど、こういう儲け方が蔓延している世の中はよくないんじゃないか、

とまで大げさなものじゃなくても、

ゲーム業界なら、自社の儲けを考えるだけでなく、ゲーム業界全体を活発にしていこう、

人の生活をよくする事業、現在の社会問題を解決し、不安を取り除くインターネット事業を

作っていこうと考えていることが、話をする中で伝わってくるんだ。

だから働く側も、個人は個人として、自分の中心によく考えて練った軸を持っていたいんだ」


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