虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

「間違ってないよ!本当のことだよ!」

2019-01-04 21:02:59 | 通常レッスン

年中のAくんは三人兄弟の真ん中さん。頭脳パズル好きで集中力や根気のあるお兄ちゃん、

甘え上手で人から学ぶのが上手な弟君にはさまれて、

普段は目立たないことが多いのです。

「家では、ひとりの子の話を聞き終わる前に兄弟が割り込んで、きちんと

聞くこともできないので、たまにこの子だけの時間を作ってあげたい」

というお母さんの希望で、少し前から、

兄弟とは別に、Aくんだけが虹色教室に通う日を設けるようになりました。

 

そうしたAくんのレッスン日に、こんな出来事がありました。

ブロックをどんどん積み上げるうち、どれだけ高く積めるか確かめたくなったAくん。

Aくんの背より高くなったところで、教室にある1メートルまで測れる長い物差しを出してきて、

天上からぶらさげたバネを使って物差しをブロックのタワーの横に立てると、

Aくんの目がきらきらと輝きだしました。

そして、「こんな長い物差しお家にもあるよ」と言いました。

それを聞いたAくんのお母さんが、Aくんのかわいい間違いを面白がる様子で、

「こーんな長いのはないかなぁ?」と言って笑いました。

「そんなことないよ。あるよ、ほら、お父さんの~」とAくんは必死になって

お母さんに説明していました。

 

Aくんはとても観察力がある子で、虹色教室でも、2、3歳の頃から、

見たものを正確に表現しようとする姿や自分の頭で考えたことを

別のものと比較しながら言い表そうとする姿がありました。

「そんなAくんが、懸命に『ある』と言い張るのだから、

身長計とか50cmの長めの物差しなど、何か根拠となるものを

目にしたんだと思いますよ」

そんなことを話していると、Aくんのお母さんが急に思い出した様子で、

「そういえば、あります。あります。1メートルの物差しが。

Aの祖母が使っていた洋裁の物差しで~」とおっしゃいました。

やはりAくんは正しかった……!?

算数の時間、子どもは買い物したいだけ(教室の)ATMでお金をおろすことができます。

Aくんは、「500円ほしい」と言いました。

「Aくん、お店の品物は全部10円だから、500円分も買うとしたら、

50個も品物を選ばなきゃいけないよ」と言うと、

それでも、「500円がいい」と言います。

「10円、20円~」とがんばって数えていき、500円分買い終えました。

買い物も大変です。

 

 

火山を噴火させる実験をした後で、大好きな水の中の生物を海や川において

遊びました。そして、いっしょにいろいろな魚の載っている本を読みました。

本には、恐ろしいピラニアの写真と説明が載っていました。

それを見たAくん。

「お父さんは前にピラニアを飼っていたんだよ」と得意そうに

言いました。

それを聞いたお母さんが思わず吹きだして、「ピラニアは、ちがうわ。ピラニアは飼っていないと思う。

そんな怖い魚は飼ってないと思うよ。

別のピのつく魚かな~?」とまたもやAくんのかわいらしい間違いを訂正するように、

笑いながら言いました。

「ちがう。ピラニアを飼っていたって、お父さんは言ってたんだよ。ピラニアなんだよ」

Aくんは必死になって、言い張っていました。

 

その翌日、教室が始まる前にAくんのお母さんから電話がかかってきました。

Aくんの名誉挽回のための電話でした。

何とお父さんは、昔、本当にピラニアを飼っていたそうなのです。

Aくんが正しかったのです。

 


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