自閉っ子や知的な面でゆっくり成長している子らと
『ピッケのつくるえほん』を通して関わる時のアイデアを紹介します。
幼い子やハンディーキャップのある子たちが
最初の覚えて面白がるのが、画面上の小物を押さえて、そのまま指でスライドさせる
「ドラック」という動作です。
子どもたちは、上のパレットにある絵をどんどんどんどん
画面にスライドさせていったり、
画面に置いたものを外にスライドさせて捨てていくことを繰り返す時があります。
無駄な遊びのように見えますが、
「ドラック」という操作に慣れて、扱うのが上手になるので、
たっぷりやらせてあげています。
そうやって画面にいくつも人形を置いていくと、上の写真のように
重なった妙な絵になってしまいます。
そんな時に、「うしろにかくれているのだあれ?」という
文字を打ち込むと、面白いクイズ絵本になります。
そんなふうにいたずら半分にしていた行為が意味のあるものに変わると、
「手であれこれ触って遊ぶ」ことから、「誰かに見てもらいたい作品作り」へ
気持ちが移っていくことがあります。
どんどんどんどん絵を出して重ねていく動作を楽しんだあとで、
画面の左下あたりにある「鍵のボタン」の扱いを教えてあげるのもいいです。
このボタンを押して鍵を開けると、手で触った絵が前面に出てきます。
「かさねじゅんをかえる」というハンディーのある子たちには
難しい操作ですが、
鍵を開けたりはずしたりして、絵を前にしたり後ろにしたりする遊びを
一緒にしていると覚えてしまいます。
遊びの幅が狭く会話やコミュニケーションが困難なAくん。
自分の思いを言葉にして伝えることが上手にできないので、
自己表現のツールのひとつとして『ピッケのつくるえほん』と親しんでもらいたいと
考えていました。
Aくんはプラレールが大好きです。
『ピッケのつくるえほん』の汽車の絵を見つけると、
それをドラックして画面に置きました。
汽車をドラックすると、上の写真の右にある絵が現れて、
それを押すと汽車が別の絵柄に変わります。
Aくんは、連結させる後ろの車両に変えて、最初の汽車の後ろにつけました。
3台目の汽車も他の絵に変えて……。
Aくんは、作るのに何手順もかかる連結した汽車作りが
とても気に入ったようでした。
何度も作りなおして、連結させる部分をすべて同じ色にしたり、
どれも異なる色にしたりしていました。
Aくんの物事と関わりは、最初はある一部分だけ、ワンシーンだけを
しつこいほど繰り返すことから始まります。
お気に入りの『しんかんくん うちにくる』の絵本も、
しんかんくんが電車の上に乗って、「こらこらだめだろう」と叱られるシーンと
しんかんくんが街中に出て、道路標識を踏んずけてしまったシーンばかり
うんざりするくらい見たがっていました。
『ピッケのつくるえほん』でバス停の標識を見つけて、
「しんかんくん、踏んだねぇ」と大喜びのAくん。
イラストをドラックさせると、拡大縮小ボタンと一緒に
それを回転させるボタンがでてきます。
標識をドラックさせたあとで、回転させて
しんかんくんに踏まれた場面を再現するのを楽しみました。
こんなふうに、自分でストーリーを考えるのが難しい子とは
お気に入りの絵本の一シーンを再現するのもいいです。
ドラックすることが楽しい時、「これは仲間か仲間じゃないか、関係があるものか
関係がないものかといったおしゃべりを楽しめます。
言葉で伝えるのが困難な子も
画面に絵を置きまがらだと比較的話しやすいのです。
「気球と飛行機と月は仲間。みんな空にあるから」とのこと。
「りんごとぶどうとばななといちごはくだものの仲間。カスタネットは楽器の仲間」。
「かにが3びきいました」
(一匹のかにの上に家をドラックさせて……)
「お家に帰ってしまったかにがいるよ。何匹、お家にかには
帰ったのかな?」
答えあわせ。
小学生の知的なゆっくりさんの女の子は、
『ピッケのつくるえほん』に打ち込みながら
学習すると、それまでなかなか覚えることができなかった概念も
理解できるようになりました。