虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

2~4歳児のけんか どのように対応したらいいでしょう? 2

2021-05-04 10:29:13 | 教育論 読者の方からのQ&A

2~4歳の時期には、とても大切な課題があります。

『自己統制力を育てる』ということです。

 

2~4歳児が、子ども同士で上手に遊べずに、

しょっちゅう大人の介入を必要をとするような揉め事を起こすのは、

大人の手と心を借りて、自分を大きく成長させていかなくてはならない時期だから

ともいえます。

 

大人たちが遠巻きに微笑みながら見つめるなかで、

子ども同士、平和に幸せそうにじゃれあって遊んでいるという……2~4歳の子を持つ

親御さんたちが期待する「子どもの遊びの世界」のイメージは、

テレビCMのための作りあげた虚構の世界か、

子犬たちがドッグランで繰り広げる遊びの世界に近いものです。

 

実際の2~4歳の子たちというのは、人間の子どもとしての育ちの課題を持って

いますから、いろいろと自分で揉め事を創り出しては、

大人から適切な指導を引き出そうします。

 

自分より先に生まれた大人という先輩の手と心を借りて、今の自分より一段高い次元の

精神的な力と態度を獲得しようとがんばっているのです。

 

獲得する力が『自己統制力』なんていう一生を左右するような能力ですから、

1回、2回の練習で身に着くはずもありません。

それで、くる日もくる日もギャーギャーワーワーわめき散らしては課題とぶつかって、

大人に助けられながらゆっくりゆっくり自分の心と身体を作りあげていくのが、

2~4歳児の姿です。

 

「大人の適切な指導」なんて言葉を使うと、

「ああ、しつけのことね」「きちんと正しいしつけを教えていくことね」と

感じるかもしれません。もちろん、そうではあるのですが、

けんかをするから、「けんかしてはだめ」「おもちゃを貸してあげなさい」

「お友だちに優しくね」と教えることが、この時期のしつけだと思われているとしたら、

ちょっと問題があるかもしれません。

 

なぜなら、いつまでも子どもの自己統制力が育たないままで、

親の前ではいい子でも、集団の場や、お友だちの前ではわがまま放題だったり、

小学校に入学してからも2、3歳児のように聞き分けがなかったり、

指示には従うけれど、自主性や意欲が乏しかったり、

自己主張ばかりして自分勝手に振舞うような場合も、

先に挙げたようなしつけはしっかりしていることが多いからです。

 

山梨大学の教育人間科学部の加藤繁美先生によると、

「子どもの自己統制力が育っていく道筋にはひとつの構造がある」そうです。

「子どもが自己統制力を自分のものにする過程で、その途中を省略させられたり、

ゆがめられて自己形成させられた場合、

うまく自分をコントロールできなくなってしまう」というお話です。

 

それでは、自己統制力というのは、どのように育っていくのでしょう?

『人とのかかわりで「気になる」子』にあった加藤繁美先生のお話を簡単に

要約して紹介しますね。

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まず、まだ泣くことくらいしか自己表現できない赤ちゃんの時期に、

大人たちが子どもの発する言葉にならない子声(自覚しない要求)を

読み取り、ていねいに「意味づけ」し続けること。

そうしたコミュニケーションの繰り返しのなかで、自分の要求が音声と対応すること

を知っていきます。

同時に人と関わる心地よさを無意識世界に形成していきます。

 

次に、「愛されることの心地よさ」をベースに、音声で表現できることを知った

要求世界を、自分の興味・関心にひきずられるようにして

どんどん表現するようになります。

(『人とのかかわりで「気になる」子』ひとなる書房より要約しています)

 

要求を主張する主体として成長していくこの時期、大人の対応が重要です。

つまり「受け止めながら、方向づける」という対応が、ていねいになされることが

重要です。大人の側に余裕と辛抱強さが必要になってきます。

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どうして大人の側に余裕と辛抱強さが必要なのかというと、

この時期の子どもの要求は、融通が利かない一方向のものだからです。

どうしてそんなにわがままな要求なのかというと、幼児はまだ幼児だからで、

そうした原石のような要求を表現しつつ、

しだいにそれに磨きをかけて、自分の力でコントロールできるものにしていく

という課題を抱えて生きているからです。

 

でも、ちまたで見かける大人の幼児への対応は、

子どもの要求自体を無視する、機嫌を取って紛らわす、大人同士の関係維持のために

要求を変形する、要求を表現できない場に連れていく(習い事や

ショッピングセンターなど)というものが多いです、

また、大人が子どもに対する余裕を持って辛抱強く接することが我慢できないため、

その言い訳として、

「子どもには小さいときから、きちんとしつけないといけない」「最初が肝心」などの

言葉を使って、問答無用で大人の意のままに従わせるという場面もよく見かけます。

一方で、子どもの言いなりになって、大人として

子どもの成長を方向づける仕事を放棄してしまっているケースも目立ちます。

 

自己統制力とは、無意識の世界に形作られていくものです。

幼児は、感情と皮膚の感覚、身体の感覚で、

心地よさをベースに、正しい自分のあり方を学習していきます。

 

まず、自分の中に湧き上がるもやもやした感じ、ざわざわした感じ、イライラする感じ、

のぼせあがるようなカッとする感じ、もじもじするようなはっきりしない感じ、

そうしたさまざまな身体と心に湧いてくるものを

大人に受け止めてもらって、言葉で表現してもらい、

それと向き合い、乗り越えるまで

根気よくネガティブなものに付き合ってもらうという過程を通して、

身についてくるものです。

 

「わたしはこういうことがしたいけれど、お友だちも同じようにしたいから、

今はがまんしてこうしよう」といった自分の行動を導きだすような

自分の内面の対話ができるようになってくるのです。

 

虹色教室でそうした大人のサポートをたくさん必要とする時期の子らと過ごすとき、

子どもの心を充たす創造的な問題解決の仕方、

ワクワクするような想像力あふれる解決法を

大人がたくさん示してあげると、

成長するにつれて、自分をコントロールするのが上手なだけでなく

集団をリードして、揉めているお友だちたちに魅力的な問題解決の方法を

提案できる子に育っていきます。

そうした具体的な解決法について、実際の教室での例を紹介しますね。

 

<実際の虹色教室での揉め事の解決例>


★2、3歳児のけんか……想像力を使って解決を♪


3歳になったばかりの☆ちゃん、★ちゃんのレッスンです。

2歳のころはけんかばかりしていた☆ちゃん、★ちゃん。

お母さんたちの協力で

十分感情を外に表現できる環境(泣いたり、わがままを言ったりすることを

しっかりできるようにさせること)を用意して見守ってきました。

そうして、3歳になった☆ちゃん★ちゃん、

創造的に協力し合って遊ぶ姿は目を見張るものがあります。

自己主張をきちんと受け入れてもらってきたため、自分がしっかりできて、

自分とは異なる意識を持つお友だちをきちんと理解しています。

ごっこ遊び、創作遊びと自分の頭で考えて、

内面からキラキラするものがあふれてくるように遊びます。

今興味があるのは引っ付くものと引っ付かないもの。

じしゃくやテープで引っ付く引っ付かないを試すことに夢中です。

写真はかばん作り、ボタンや糸のコラージュを相談しながらしているところです。

作り方はこれまでの経験から、全て自分たちで考えたんですよ。

本当に仲良く上手に遊べるふたりですが、疲れたり、お気に入りが重なると

けんかをはじめます。

今日は白いネコのぬいぐるみを取り合っていました。

「それなら、ぬいぐるみさんたちに誰と遊びたいか決めてもらおう!」

と提案して、フラミンゴやトトロバスや白いネコのぬいぐるみを抱えて

「遊びたい子に、遊ぼうよって相談してごらん」と言いました。

ふたりともけんか気分はどこかにいっしまって、いきいきした表情になりました。

☆ちゃんが、フラミンゴに「遊ぼうよ」と声をかけます。

「いいけど…おなかがすいているのよ。おいしいものを食べさせてくれる?」

「いいよ。食べさせてあげる」フラミンゴが納得して☆ちゃんにだっこされます。

★ちゃんは、白いネコに「遊ぼうよ」と声をかけます。

「え~眠いんだけどな~どうしようかな……。だっこしてゆらゆらしてくれる?」

「いいよ。」白いネコは★ちゃんのところに。

2、3歳の子は、絵本の中のようなイメージの世界を生きています。

絵本の世界で起こるような問題の解決法が大好きで納得します。

とてもユーモアがあって、不思議で優しい気持ちのある解決法が好きなんです。

牛乳のおもちゃの取り合いの時も、近くにあったブランケットを

ぐりとぐらの作ったような大きなホットケーキを焼くお話の世界に導くと、

たちまち仲良く牛乳をそれにそそいで、ホットケーキを焼き始めました。

子どもがけんかを始めたとき、楽しくユーモアのある解決を提案していると、

大きくなるにつれて、友達同士でとても上手に問題を解決するようになってきますよ。



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