金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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15:藤沢周平 『蝉しぐれ』

2005-05-22 14:03:34 | 05 本の感想
藤沢周平『蝉しぐれ』(文藝春秋)
★★★★★

時代小説と歴史小説の相違については、
諸説あると思いますが、わたしの個人的な定義は、

「歴史小説」
=史実にもとづいた物語。実在の人物を中心に描く。
「時代小説」
=架空の人物が中心となって活躍。舞台は江戸時代が中心。

となっています。
そうすると、わたしが今まで読んだ時代小説は、
池波正太郎『鬼平犯科帳』『剣客商売』、
平岩弓枝『御宿かわせみ』あたりに限られるのですが、
既読の時代小説でいちばん好きなものをと言われたら、
迷わずこの本をあげます。
 
最初は目にしたのは、仕事で読んだ中学校の教科書。
「最近の教科書は恋愛の話が載ってるんだなあ。
 時代小説っていうのもめずらしい」
という程度の認識でした。
それが本を一冊読んだら、印象が一変。
「なにこれ!」と、もだえました。
ひとりの下級武士の少年時代から壮年までの物語なのですが、
とにかくストイックでせつない。
藩内の陰謀と、叶わなかった初恋の女性への思いがからみ、
彼女を守ろうと命をかける主人公が男前!
ラストのふたりのやりとりに、胸が震えます。

NHKでドラマ化されたときのキャストは素敵でした。
内野聖陽の文四郎はりりしくかっこよく、
水野真紀のおふくさまはしっとりと美しい。
秋に映画が公開されるようですが、
このイメージを越えることはないだろうと、
見にいくのに躊躇してしまいます。
コメント (2)
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