金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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74:永井路子『銀の館〈下〉』

2023-04-11 14:37:00 | 23 本の感想
永井路子『銀の館〈上〉』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
世が乱れに乱れた室町後期、
将軍足利義政の正室として「権力」を握った日野富子。
ともすれば悪評高い彼女の意外な実像と、
当時の庶民を生き生きと描いた傑作長篇。
 
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ゆうかと蘭之介は、
やっぱり富子の物語にはたいして絡まないままだったけれども、
彼らがいることによって富子が関心を寄せない御所の外の世界――
庶民の暮らしや世相、合戦が起こるまでの空気が描かれるので
「室町後期という時代」を描くという点ではよかったと思う。
ゆうかは、永井作品に出てくる女性の登場人物の中では
いちばん好き。
 
富子視点だからそうなるのだろうが、
無能なだけでなく、拗ねたり横槍を入れたりして
邪魔してくる義政が大変に腹立たしい。
富子が悪女扱いされる原因だと思われる「政治への介入」も、
この話の中では「我が子を守るため」と
「義政が役立たずなのでやむなく」ということになっている。
富子の母としての愛が、息子にとっては、
独りよがりのうんざりするものである、というのも、
それを当人からぶつけられて富子がショックをうけるのも、
永井作品らしさを感じるところ。
 
面白かった。

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73:伊東玉美『宇治拾遺物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 』

2023-04-11 13:17:00 | 23 本の感想
伊東玉美『宇治拾遺物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 』
★★★★☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
「こぶとりじいさん」や「鼻の長い僧の話」など、
とんでもなくて面白い鎌倉時代の説話(短編物語)集。
総ルビの原文と現代語訳、わかりやすい解説とともに、
やさしく楽しめる決定的入門書!
 
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「亀を飼って解き放った話」って、出典はこれだったのか。
漢文かと思ってた。
 
「主格や連体格を表す助詞『の』に比べて『が』は、
 軽い扱いを表す傾向があった」
とか
「播磨国は陰陽師の本場というイメージも形成されていた」
とか、
「へ~! 知らなかった~!」と感心するところも多かったし、
全体的に面白かったのだけども、
終盤で孔子のことを「『論語』の著者である」と書いているのを見て
この本に書いてあることの信憑性が一気に下がってしまった……。
著者じゃないのでは……??(そんな新説があるんだろうか)
これがなければ★5だった。
 

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