早いもので開業して5年である。よくまあ潰れずに続けられてきたもんだと、とりあえずほっとしている。この5年、何とか誤診せず手遅れにならなかった事例もあったので感慨深い。もし見逃していたら生命の危険もあるような疾患だったので冷汗モノだったといえるだろう。甲状腺クリーゼにはじまってヘルペス脳炎、胸部大動脈解離、不安定狭心症、そして最近ではくも膜下出血があった。救命センター時代にはこれら疾患は何度も診たことはあった。しかし大学では緊急に画像診断や血液所見などの検査を潤沢に使える環境にあったので診断は容易であった。開業してからは緊急にできる確定検査機器なぞ何もない。クリニックにて可能なのは心電図と胸部レントゲンくらいである。ほとんどこの「無手勝流」の状態で、よくぞこれらを見逃さなかったと安堵のため息が出る。