さて自分は高校時代に芥川龍之介の「歯車」という短編を読んだ。あの訳の分からない描写と不気味になるほどの幻視の表現には、生理的に悪寒を覚えたような記憶がある。それ以来、一度も読み返していない。晩年の作品だというので「きっと芥川は気がふれてしまったんだ」とずっと理解していた。多感期の高校生にはとてもお勧めできないような悩ましい病理を抱えた作品である。でも芥川の他の作品、たとえば「蜘蛛の糸」とか「鼻」などは教科書でよんだが面白かった。そして期末テストでは「他の芥川の作品をあげよ」などとの設問があり、自分は「歯車」とかいて〇をもらった記憶がある。しかしながらどう考えても「歯車」を高校時代の多感期に引き合いに出すことは、とてもお勧めできないような作品だと思うのだが。