吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

芥川と偏頭痛 その4

2015年09月05日 06時06分47秒 | 日記
 ところがこの前の医師会での偏頭痛の講演である。演者は、その件を例にあげて「芥川は実は偏頭痛持ちだったんですねー」と解説してくれた。数十年ぶりに自分の誤解もとけたのである。実は芥川は閃輝暗点の前兆をもつ偏頭痛にずっと悩ませられていたのである。「そーか、彼は実は狂人ではなく、偏頭痛に悩んでいた病人だったんだー」と納得できた。しかしながらそのような事情を知らない高校生が読み込んでも訳が分からず、心を惑わせてしまうばかりである。やはりこれは有害図書なんだろう。結局のところ芥川は自殺してしまったのである。現代社会では自殺と言う行為は公序良俗に反するものでありその行為自体は社会的に認められているものではない。自殺未遂の患者の治療費は医療保険では認められないくらいである。しかし彼がもしかしたら気がふれているという強迫観念により自殺という最終手段を選んだとしたならそれはとても無念である。現在の医療水準では偏頭痛と診断し投薬治療が可能である。もし芥川が現代に生きていたなら自殺することなくもっと多くの作品をのこしただろうと思うと何とも妙な気分になるのである。