六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

告白、あるいはある勧酒の話

2023-07-22 02:17:56 | よしなしごと
■私がはじめて酒類を口にしたのは、15歳の頃だった。相手は父、というより父に勧められてだった。「よしなさいよ」という母に、父は「15といえばむかしなら元服だ。そういえばこの俺も15歳の初陣より・・・・」と自分の身の上話が始まるといった具合。
■その父は尋常小学校高等科(今の中2)卒業後、人間より熊のほうが多い福井県の山村の集落から、柳行李ひとつを背負って旧油坂峠を越え、岐阜の材木屋へ奉公に出た。その歳から見知らぬ土地で肩肘張って生きてきたのだと思う。
■その父も、20年近い奉公の後、やっと自分の暖簾を掲げたのもつかの間、1944年、戦争に取られて満州へ。敗戦後はシベリア抑留。
■帰還して以後、平の勤め人として材木屋へ。やっと自分の会社をもつに至った頃、私が元服へ。それがこの最初のシーン。
■今年の秋、私は亡父の享年に至る。
 

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