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武士の尾 |
森村 誠一 | |
幻冬舎 |
何時ごろどういう状況で作られたのか、判然としない久保田万太郎の句がある。
雪の傘たゝむ音してまた一人
私は忠臣蔵の討ち入り前の義士たちが、三々五々あのそば屋に集合している風景がすぐ目に浮かんだのだが・・・如何であろうか?
劇作家でもある彼が、忠臣蔵についての作品があるのかどうか承知しないが、いわゆる文士劇などではそれらしいことをやっているようだ。あの風貌からどんな役をやったのか、ちょっと想像し得ないでいる。
赤穂浪士の討ち入りは元禄15年12月14日、新暦に直すと1月30日だが、深々と雪が積もる様も容易に想像が付く季節である。傘に積もった雪を、はやる気持ちを抑えながら叩き落として、同志の待つ部屋へと歩を進めていく、浪士の姿が浮かぶのだが・・・・
ぜんぜん違っていたら大笑いだが、この時期になると何故か思い出す俳句である。