夏目漱石の句に 正月の男といはれ拙に処す という句があるのを知った。
漱石は一月五日が誕生日、漱石は「拙」という言葉が好きなようだが、あの有名な 木瓜咲くや漱石拙を守るべく という句が思い出される。
「拙」とは「つたない、まずい」「自分や自分に関することを謙遜していう語」と説明されるが、漱石は決して謙遜をしているようではない。
菫ほどな小さき人に生まれたし の句があるように、「拙」や「菫」に自分の生きる理想を表しているのだろう。
「正月の男」とは「おめでたい男」との揶揄がこめられている。「拙」という言葉はこれに応じていて、「世渡り下手だが愚直に生きていく」という一貫した姿勢が貫かれている。
私は正月十九日の生まれ、松もとれて「正月の男」ではないが、漱石のような謙遜の「拙」ではなく、八十余年まさしく世渡り下手でただ愚直に生きてきた。
それ故に、これらの漱石の句が大好きである。
バルコニーにはプランターに「菫」を育てているが、そろそろ紫色の「小さな」花を見せてくれる頃である。
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