Sightsong

自縄自縛日記

ローラン・トポール

2008-03-09 23:56:00 | 思想・文学

ローラン・トポールといえば、ルネ・ラルーと組んだアニメ『ファンタスティック・プラネット』(1972年)である。美術以外にも、小説を書いたり俳優として映画に出たりする、ということは知ってはいたが、実際にトポールの小説を読むのははじめてだ。

この、『幻の下宿人』(1964年)は、トポールが26歳のときにはじめて書いた小説のようだ。単にユニークなものなんだろうと思って読み始めたが大間違い。主人公をとりまく世界の悪意は、弱気な男の妄想と相まって、際限なく発展していく。もう最後のあたりは読むのを中断することができないほど面白く(仙台の空港でも読み続けた)、そして真剣に怖いヤン・シュヴァンクマイエルの『悦楽共犯者』を思わせるようなエキセントリックな人間たちが次々と出てきながらも、馬鹿馬鹿しくならず、逃れられない世界を形成しているところが、ただのサイコホラーではない点だろうとおもった。

トポールの画集は、『トポールの眼』(アートギャラリー環、1996年)を持っている。『ファンタスティック・プラネット』が劇場でリバイバルされたときに買ったものだ。これを観ると、想像力の歯止めのなさが実感できる。改めてインタビュー記事を読むと、アルフレード・クビンにも言及されていて、世界が真綿で絞まってきて不安と狂気がぶるぶると均衡していくような共通点についても納得した。

『幻の下宿人』は、ロマン・ポランスキーによって映画化もされているようだ。そのうち探し出すつもりだ。


『幻の下宿人』(河出文庫)


『靴のコレクション』(1993年) 『トポールの眼』(アートギャラリー環、1996年)より


『悲惨を引きずる ― コージー・コーナー』(1993年) 『トポールの眼』(アートギャラリー環、1996年)より