Sightsong

自縄自縛日記

本部半島のカンヒザクラ(寒緋桜)と熱帯カルスト

2008-03-20 23:59:45 | 沖縄

アントニオ・ネグリの来日が中止になったらしい。チャンスがあれば講演を聴きに行こうと思っていたのだが。

東京ではそろそろ桜が咲こうとしているが、沖縄では年始のころ、カンヒザクラ(寒緋桜)が咲く。ソメイヨシノと違って、色がやや濃く、花が下向きなのが特徴のようだ。年末、沖縄本島では、本部半島八重岳でカンヒザクラの咲き始めを見ることができた。八重山のほうではもっと早いのだろうか。


カンヒザクラ、八重岳、2007年末 Leica M4、Carl Zeiss Biogon ZM 35mmF2、Tri-X、イルフォードマルチグレードIV(光沢)、2号フィルタ

この本部半島の一部は琉球石灰岩から成っている。概ね、100万年以上前の、サンゴ礁などに起因する石灰質の堆積物である。つまり、堆積後に隆起したわけだ。本部半島の西にある瀬底島では、キャベツ畑の横に琉球石灰岩が露出しているところを見た。


瀬底島の琉球石灰岩、2007年末 Leica M4、Carl Zeiss Biogon ZM 35mmF2、Tri-X、イルフォードマルチグレードIV(光沢)、2号フィルタ

しかし沖縄全体を見れば、沈降した地域も多い。100万年前の陸地の中心は慶良間諸島あたりとされ、いまの島々は過去の頂ということになる。


琉球石灰岩の分布地域 『沖縄の島々をめぐって』(沖縄地学会編著、築地書館、1997年)

ただ、時代もいろいろあって、琉球石灰岩よりも遥かに古く、中生代二畳紀、三畳紀といった2億年以上前の層が本部半島の中の部分を占めている。フズリナなどから成る大きな山は、琉球セメントが原材料として採掘を続けている。また、同じく2億年以上前の石灰岩が侵食され、中国の桂林のような熱帯カルストを形成しているところもある。これは秋吉台のような平坦な温帯カルストとは違って、奇妙で面白い。


琉球セメントの採掘する石灰岩、2007年末 Leica M4、Carl Zeiss Biogon ZM 35mmF2、Tri-X、イルフォードマルチグレードIV(光沢)、2号フィルタ


本部半島の熱帯カルスト、2007年末 Leica M4、Carl Zeiss Biogon ZM 35mmF2、Tri-X、イルフォードマルチグレードIV(光沢)、2号フィルタ

ちゅら海水族館の向こうに見える、尖った山が特徴的な伊江島はまた異なる。この山(伊江島タッチュー)は、琉球石灰岩の下から固いチャートが突き出しているものらしい。伊江島を訪れたことはないのだが、頭痛持ちの自分は、百合の香りでくらくらしてしまうのではないかと思っている。


伊江島を臨む、2007年末 Leica M4、Carl Zeiss Biogon ZM 35mmF2、Tri-X、イルフォードマルチグレードIV(光沢)、2号フィルタ

●参考 『沖縄の島々をめぐって(日曜の地学14)』(沖縄地学会編著、築地書館、1997年)
 ※ 沖縄への旅に携行すると楽しさ倍増。→ たとえば「銭石」を探したり