気になっていた『胡同のひまわり』(チャン・ヤン、2005年)を観た。中庭のある典型的な住居・四合院が連なり、横丁が絡まる北京の下町・胡同(フートン)は、オリンピックを前にみるみるうちに壊されている。この映画は、文化大革命前から、そんな現在の北京までの様子を見せてくれている。
四合院の上から
四合院の中庭
白菜の調達
取り壊される胡同に座って絵を描く
胡同とビル
四合院の中庭で洗濯や煮炊きや修繕をしたり、悪ガキたちが小道や屋根で遊んだり、冬に備えて白菜を蓄えたりという風景は、私たちのものではないが、何故か懐かしさのような郷愁にとらわれてしまう。文革で下放され、画家への道を絶たれた父が戻ってきて、なつかない息子に厳しい教育を施す。息子は激しく反発しつづけながらも、画家になる。その確執を見ていると、こちらも、親不孝はお前のことだと言われているような気にさえなってしまい、堪らない話だ。
息子がはじめての個展を開く場所は、北京市街と空港の間あたりにある「北京798芸術区」の大きなギャラリー、「798 Space」だった。毛沢東や共産党を讃える文字や、国営工場当時の工作機械をそのまま残した奇妙な空間である。偶然だが、私の垣間見た現在の北京と重なる風景が多く出てきて、没入してしまった。
●「798 Space」のこと→「北京的芸術覗見(2)」
●胡同の写真 →「北京の散歩」「牛街の散歩」
「798 Space」の文字
「798 Space」の工作機械