もろもろのストレスが極大に達し、渋谷近辺に所用で行ったので、帰りに渋谷シネ・アミューズで『世界で一番美しい夜』(天願大介、2007年)を観た。何しろ三上寛が主題歌を歌うだけでなく漁師役で出演し、美術を地底レコードでお馴染のスズキコージが担当し、R-18指定とあっては、ストレス解消にこれ以上のものはない。
劇場ロビーには、スズキコージの劇中で使用された作品が展示してあった。あんな森林の絵ははじめて見た・・・天才ぶりをいかんなく発揮している。
知らなかったのだが、監督の天願大介は今村昌平の息子ということだ。今村映画で、ちょっとイカれた女の子が登場するものといえば『神々の深き欲望』がある。これにもイカれた女の子が出てくるが、実は「頭が良すぎる」人物であり、三上寛の娘ということになっている。「馬鹿アレルギー」であり、近づいた人間に過敏に反応したかどうかを確認するために、自分の腹に湿疹ができていないかを見るところで、こちらはもう爆笑してしまう。
縮めて言うとつまらないが、不幸な世界を変えるためには、みんな○○○○を思い出そうよという、極めて偏ったメッセージがある。そのために夜は真っ暗になり、世界で一番美しい夜があらわれ、世界中の子どもたちが安心して眠ることができる世界につながっていく。馬鹿馬鹿しいが、そうかも知れないなと妙に納得する。
霊を見ることができる月船さららや、蛇になる田口トモロヲなどの設定も秀逸。現代の女子中学生が振り返るナレーションを入れなければさらなる怪作になっていたような気がするが、元気が出る傑作であることは間違いない。疲れた大人はこれを観に行こう。
三上寛、レディージェーン、2005年 Leica M3、Summicron 50mmF2、Tri-X(+2)、フジブロ3号
挿入歌は「陰陽」と「かけら」。いま手持ちのCDを確かめたら、「かけら」はこれらの盤に入っている。
林栄一と組んだ四人幇『オレ達の事情』(Off Note)、川下直広と組んだ『air borne』(Off Note)、新宿二丁目でのライヴ『異議ナシ!』(OPEN Records)
>> 映画のサイト