木更津市の盤洲干潟に行ってきた。「盤洲干潟をまもる会」の見学会である(2008/6/15)。
盤洲干潟は、木更津港に注ぐ小櫃川河口あたりを中心に分布している。近くには新日鉄君津工場があり、干潟からよく見える。その向こうには東電の富津火力があり、逆側には、川崎まで通じるアクアラインの入口が見える。また近くに陸上自衛隊や航空自衛隊の駐屯地があり、ヘリが訓練している。
東京湾全体で見ると、埋め立てを免れている干潟としては、三番瀬や富津と並んで大きなものだ。ほかにも、ラムサール条約に登録されている谷津干潟などがある。
『干潟ウォッチングフィールドガイド』(市川市・東邦大学東京湾生態系研究センター、2007年)より作成
盤洲の目玉は、何といっても小櫃川河口に残された葦(ヨシ)。このために、陸域から海域まで連続した豊かな生態系が成り立っていて、何しろ三番瀬と違って自分の足でアクセスできる。とは言っても駅から遠く、内房線の木更津の手前、巌根駅から25分歩いて集合場所に着き、そこから車に乗せてもらって田んぼの畦道を進んだ。堤防から干潟に入り込めるのは小さなゲートだけ。自力では見つけるのが極めて難しいに違いない。
カメラはペンタックスLXに77mmF1.8Limited、それに偏光フィルタ(干潟では必須)を付けたものを持っていった。フィルムはベルビア100を2本。
ゲートから入ると、まず堤防の向こうに葦原がある。途中にはクリークなんかもあり、汽水域としてかなり理想的なエリアのようだった。いきなり、息子がシジミを発見した。外来種かもしれなかったが、たかがシジミではなく、東京湾では非常に少なくなっている。
三番瀬よりも驚かされたのは、蟹の種類の多さである。
まず、クリークには小さいチゴガニがたくさんいて、白いハサミを両方上げ下ろしするダンスを踊っていた。近づくとすぐに逃げる。ハサミがひらひら動くさまは、沖縄のシオマネキを思い出させるものだった(こちらは片手だけで、動きが上下逆だが)。まわりには砂団子がたくさんあって、有機物を食べたときにチゴガニが作ったものだ。コメツキガニの作る団子よりは粗っぽい感じだった。
ここで威張っている蟹は、葦原(ヨシハラ、アシハラ)の名前通り、アシハラガニだ。特にアシハラガニよりもちょっと色が濃いヒメアシハラガニは、東京湾ではこの小櫃川河口にしか居ないということだった。
形が面白いのは、オサガニとヤマトオサガニ。オサ(長)の名前の通り、甲羅が横に長細い(オサガニのほうがヤマトオサガニより長い)。潜望鏡にもなる長い目は、パタッと横に折りたたまれて収納される場所があるのがユニークだ。オサガニの目は白っぽい。
前に進むことができるずんぐりむっくりのマメコブシガニは三番瀬にもたくさんいた。手が赤いのはアカテガニ。コメツキガニはすぐ逃げるので姿が見えないが、ただの砂だとおもっていたところが、じつはコメツキガニが作った砂団子がびっしりあるのだと気付き、歓声をあげた。
貝はと言えば、シジミもアサリもハマグリも少なくなっている。特にハマグリはほとんど東京湾では絶滅しているようで、船橋あたりではホンビノスガイが「白ハマグリ」として売られている。アサリはどこもそうだが、中国や北朝鮮から稚貝を輸入してきて撒いているようだ。
ムラサキイガイ(ムール貝)、牡蠣、屍肉にむらがるアラムシロなんかが目立った。
稚魚を見ることができるのは、生命を実感できて嬉しい。浅瀬にじっと目を凝らしていると、マハゼやボラがちろちろ動いている。ハゼの仲間であるビリンゴや、何と変なフグもいた。
ほかには、ゴカイの棲家がある。スゴカイソメは、粘着液を出して、周りにゴミやら何やらくっつけていて、味噌汁のなかから志村けんがつまみ出す靴下のようだ。カンザシゴカイの巣は、細い石灰質の管が集合していて、割るとまだゴカイが居た。これをゴカイだということを忘れていて、息子に指摘されてしまった。子どもの記憶力は凄い。
フジツボはそんなに珍しくもないが、砂の中に住む小さいエビのスナモグリも、見ることができた。
昼になって、海を見ながらおにぎりを食べて帰った。結構日焼けしていた。