Sightsong

自縄自縛日記

キャンベラの散歩

2008-06-15 23:59:11 | オーストラリア

キャンベラは、1920年代にコンペにより設計が決まり構築された都市であり、歴史は長くない。整然としていて、あまり面白みはない。観光であるなら、あまり訪れることはないところだろう。

―――と思って、空いた時間にうろうろしていたのだが、旧国会議事堂前の広場に、妙な小屋があった。アボリジニの「テント・エンバシー」であり、主権を謳っている。また、シドニーの再開発圧力がある地区、アボリジニの多いレッドファーン地区を守れとのスローガンが掲げてある。中を覗いたが不在だった。

帰国してから調べてみると、ここに30年以上も座り込みを続けているようだ。また、現・ラッド政権に交代してから、アボリジニに対する「ソーリー・スピーチ」が行われた際には、この小屋の周辺に多くのアボリジニや支援者が集まっている。知っていたなら、シドニーでレッドファーン地区にも足をのばしたかもしれず、勉強不足を悔やんだ。


テント・エンバシー Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII

都市の中心にある公園も人工的だが、自然が多く気持ちがいい。故・大平首相が贈ったという桜の木があった。大きな池からは、日中、巨大な噴水が水を噴き上げている。写真におさめようと橋の上から見ていると、隣にも似たような人がいる。よくみると、ライカIIIaとベッサRを使っていた。「おお、M3か」「IIIaか」と、ライカ好き同士の短い会話、これだけで少し幸せになるのだった。マックス・デュペインの写真を真似して橋の写真を撮ったが、まったくつまらないものになったのでプリントすらしなかった。


公園の鳥 Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


楓 Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


ユーカリの剥げた樹皮 Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


ライカ男 Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


池のカップル Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


噴水 Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


ボード Leica M3、Summicron 50mmF2、Kodak TMAX-100、オリエンタル・ニューシーガルVC-RPII


オキナワ戦の女たち 朝鮮人従軍慰安婦

2008-06-15 22:30:42 | 沖縄

福地曠昭『オキナワ戦の女たち 朝鮮人従軍慰安婦』(海風社、1992年)は、沖縄に連れてこられ、強制的に日本軍に従事した朝鮮人女性たちの姿を描いた書である。

沖縄県内では、従軍慰安所は、本島では北部・やんばるの東村や本部半島にまで設置されていたことが確認されている。また慶良間諸島、南大東島、宮古島、西表島にもあったようだ。当然、軍人の数と慰安婦の数とは極めてアンバランスである。

ついこの間の歴史を、分ったようにタカを括らず、邪に一元化して納得するのではなく、このような無数に生起し続ける声を自分に通過させるべきこと。ひとつの感情や心は、歴史のダイナミズムなどの中で構造化するようなものではないこと。そのような当然のことを、改めて感じさせられる。

ここには、如何に慰安婦にすることを隠し、騙し、あるいは強制的に徴用したかの証言が集められている。戦中の恐るべき性的重労働が終焉を迎えても、ひとりひとりの人生は損なわれ、精神を病んだ事例も数多い。そして国を跨るということの非対称性が告発されている。

「付近の山すそには、死んだ日本軍のための慰霊塔があった。正面の右側には日本軍人ではない「戦死 日本人の碑」という碑石があり、その横には「世界人類が平和でありますように」と書かれた木の柱が立っている。
 太平洋戦争当時パプア・ニューギニアは、オーストラリアの信託統治を受けており、ラバウルの人口は一万人だった。現在は独立国になっているが、いまだにラバウルにはオーストラリア銀行はあても、パプア・ニューギニア銀行はない。そしてどこにも現地住民の犠牲を追悼する痕跡を発見することができなかった。」

「「女らしい生活をしたことなく生きて来て五十年来、胸に恨(はん)がつのって解けない。飛行機に乗ったとき、JALの翼の日の丸を見て、体が震え、力が抜けた。このような想いをして、なぜ私は日本へ行かなければならないのか、と思いながら来日した。日本政府は行ったことを認め、一言でも間違いだったといってほしい」
 約四百五十人もの聴衆を前にして、凛とした姿であった。毅然とした語り口であった。」


これからの備忘録

2008-06-15 18:42:15 | もろもろ

●NNNドキュメント'08 『基地の町に生きて 米軍再編とイワクニの選択』 6/15深夜(6/16) 日テレ 0:55-1:50 >>リンク
アメとムチ、というより、それがどうマスに受け止められているかを描いているかに注目。

●BS世界のドキュメンタリー 『綿花地帯からの告発』 6/16深夜(6/17) NHK-BS1 0:10-1:00 >>リンク >>録画し損ねた(笑)
米国南部のNovember Cotton Flowerでなく、ことはインドに広がっている。

●NHKアーカイブス 『桑田真澄661日間の苦悩』、『清原と桑田 18歳の大物ルーキー 6/21 NHK総合 10:05-11:25 >>リンク

●じんぶん企画 『未決・沖縄戦』 >>リンク
やんばるなど北部での沖縄戦に焦点を当てた映像。6/20に発売延期になった。

●エミリー・ウングワレー @国立新美術館 5/28-7/28 >>リンク >>感想
アボリジナルアートの大きな存在。オーストラリアでも観ることができなかったパースで3点観た(>> 感想)。

●マーク・フランシス、ニック・フランシス 『おいしいコーヒーの真実』 @渋谷アップリンク 5/31- >>リンク >>感想
エチオピアのコーヒー農家の様子、ひいては国際流通構造を垣間見るために。

●石元泰博 『東京』 @Photo Gallery International 6/10-7/4 >>リンク >>いけなかった
意思が漲る巨匠の、50年代以降のモノクロ。

●坂田雅子 『花はどこへ行った』 @岩波ホール 6/14-7/4 >>リンク >>感想
枯葉剤の問題は風化していない。ジャン・ユンカーマンが協力している。

●翁長巳酉 『エルメート・パスコアール秘蔵映像モロ出し』 @UPLINK FACTORY 6/17 >>リンク >>気が向かず行かなかった
エルメート好きなのだ。マイルスとの共演とか、ナベサダを困惑させた日本公演とか、出てこないだろうか。

●「沖縄戦首都圏の会」総会 @明治大学リバティタワー 6/20 >>リンク >>記録
会の設立から1年。森住卓氏による『沖縄・ヤンバルの森から、「集団自決(強制集団死)」の現場へ』講演。

●青春のロシア・アヴァンギャルド @ザ・ミュージアム 6/21-8/17 >>リンク
亀山郁夫『ロシア・アヴァンギャルド』(岩波新書、1996年)を読んでから気になる存在だったフィローノフの作品も含まれているようだ。

●平カズオ 『ブリュッセル ―欧州の十字路の街で―』 @銀座ニコンサロン 6/25-7/8 >>リンク >>いけなかった
この、ライカと銀塩にこだわり続けた写真家が住んだブリュッセルの作品は、写真雑誌で散見してきた。オリジナルプリントを観るのが楽しみだ。

●北井一夫 『ドイツ表現派1920年代の旅』 @ギャラリー冬青 7/1-31 >>リンク >>感想
三里塚のあとで当時評判が芳しくなかったそうだが、奇妙な建築の写真群はいいと思う(DVD『北井一夫全集2』に収録されている)。写真集の印刷も終ったようだ(>>リンク)。さらに、『日本カメラ』連載の『ライカで散歩』も、12月に出版予定とのこと(>>リンク)。

●野本大 『バックドロップ・クルディスタン』 @ポレポレ東中野 7/5- >>リンク
シヴァン・ペルウェルの音楽を使っていて、クルドの踊りの映像が観られそう。

●藤本幸久 『Marines Go Home - 辺野古・梅香里・矢臼別』 @ポレポレ東中野 7/26- >>リンク
このような、沖縄、北海道、韓国をリンクする試みがあったとは知らなかった。