Sightsong

自縄自縛日記

ライアン・ラーキン

2009-10-15 23:51:06 | 北米

渋谷のライズXで、『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』を観る。ラーキンの短編アニメ作品5本と、ラーキンに捧げられた現代のハイテクアニメ作品、クリス・ランドレス『ライアン』、そしてラーキンのインタビュー『ライアン・ラーキンの世界』の7本まとめての上映である。といっても、全部で44分に過ぎない。

ラーキンは早熟のオタク・アニメ作家であった。若くして短編4本を作ったあと、コカインと酒に溺れ、10年以上のホームレス生活を選ぶ。再び復帰して作りかけた作品は、ラーキンの死により未完の遺作となった。

女性と鬼との関係『シランクス』(1965年、3分)、都会のトラフィックを描いた『シティスケープ』(1966年、1分)、歩くだけの『ウォーキング』(1968年、5分)、ビートニクやフラワーの色濃い『ストリート・ミュージック』(1972年、9分)のどれもが、ラーキンひとりによる無数の原画から作られた気の遠くなるような密度を持っている。文字通り手作りであり、手法は違えど、ロシアのアニメ作家ユーリ・ノルシュテインを想起させられる。

ただ、数十年が経過したいま、圧倒される凄みがあるわけではない。手仕事の厚みと温かさの素晴らしさである。この人間臭さに比べれば、CGとラーキンの作品をコラージュ的に使った『ライアン』など、小癪なだけの作品だ。


八ッ場ダムのオカネ(2) 『SPA!』の特集

2009-10-15 00:17:03 | 環境・自然

名古屋行きのお供に、東京駅のキオスクで『SPA!』(2009/10/20)を買った。ふだんはこの下品な雑誌(失礼)には用がなく、手に取るのは、もう15年ぶりくらいだ。「元祖「脱ダム」田中康夫責任編集 マスコミが報じない八ッ場ダムの意外な真実」が目当てだ。

ここで注目すべき点は、「既に使った総事業費の7割分のオカネ」=3215億円について、それが付替道路や付替鉄道などとして全然できあがっておらず、残りのオカネで完成するわけがない、という指摘だ。

それによると、2008年末の段階で完成した割合は以下の通り。

付替国道 6%
付替県道(川原畑大戸線) 18%
付替県道(林岩下線・林長野原線) 0%
付替鉄道 75% ただし今後の土地取得が困難

さらに、嶋津暉之氏の指摘によると、建設事業費の他に、水源地域整備事業、水源地域対策基金事業などがかかってくるという。

したがって、総事業費4600億円(これも2003年に2110億円から突然倍増した)の残りの費用とされる1390億円について言えば、以下のようにさらに膨れ上がっていくことになる。

【ダムを作る】

ダム本体工事 620億円
ダムの安全化 560億円の一部
生活再建関連(未完成の付替道路等を含む) 770億円~ウン千億円?
水源地域整備事業
 997億円
水源地域対策基金事業 249億円
維持管理    8.36億円/年
環境破壊、生態系破壊  莫大(計上困難)
堆砂の浚渫 莫大(計上困難)
浅間山噴火による被害  莫大(計上困難)
危険な場所への住民移転 莫大(計上困難)
社会的不公平・不条理の野放し 莫大(計上困難) 

【ダムを作らない】

自治体への無駄遣い返還(義務)  1460億円
自治体への無駄遣い返還(義務外) 0円(無駄遣いに加担したため)
        ~525億円(無駄遣いに強制的に加担させられたため)
生活再建関連(住民に対する過去の国家犯罪の賠償) ?

「マスコミが報じない・・・」というタイトルは週刊誌の常套手段とはいえ、確かに、不充分なオカネの比較以外にも、住民が逆に反発したことばかりを報道するメディアには苛立ちを感じてしまう。さらに、本来は環境影響についても優先的に考えなければならないにも関わらず、二の次の話題とされているのは怠慢か欺瞞か。

●参照
八ッ場ダムのオカネ