Sightsong

自縄自縛日記

横山秀夫『クライマーズ・ハイ』と原田眞人『クライマーズ・ハイ』

2009-10-10 17:52:09 | 思想・文学

流行から随分遅れて、横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(2003年、文春文庫)を読む。1985年8月、御巣鷹山に日航機が墜落する。小説は、群馬県の地方紙による取材を描いており、これは作者の横山秀夫の実体験を基にしている。

それまで群馬で事件といえば、「大久保連赤」(大久保事件と連合赤軍あさま山荘事件)であったという。それらを手柄話のようにしていた古参記者たちには、 突然の日航機墜落により、嫉妬にも似た気分が生まれた。そして中曽根による靖国参拝が大きなニュースとなっており、福田・中曽根の勢力争い(新聞社の中にも「福中」のつばぜり合いがあったという)とも絡めて描かれる。

すべて24年前の古い話である。私は中学生だった。坂本九が亡くなったことに衝撃を受けた記憶がある。小説の中に、《農大二、宇部商に惜敗》という記事が登場してハッとする。桑田・清原を擁するPL学園と宇部商とが決勝で対決した夏でもあった。

迫真感があり1日で読んでしまった。ただ、喧嘩早く、体育会のような新聞記者たちの描写にはうんざりさせられる。個性的な記者たちを描くものなら、丸谷才一『女ざかり』(1993年)の方が遥かに大人だ。

ついでに、録画しておいた映画、原田眞人『クライマーズ・ハイ』(2008年)を観る。この長いディテール小説をよくまとめたものだ、というのが第一印象。堤真一も田口トモロヲも山崎努も、良い俳優である。しかし、無理に複数のエピソードを詰め込んでいるため、小声でごにょごにょと言う大事な部分がわかりにくい(映画だけを観るひとには尚更だろう)。大勢の命と1人の命を比較するため、初めて御巣鷹山で死体を見てショックを受ける若い記者を交通事故死させることにも納得できない。横山秀夫の小説では、この経験から良い記者に育っていくことが語られているし、無理に死なせてしまっては哀れではないか。

●参照
山際淳司『ルーキー』 宇部商の選手たちはいま


中国プロパガンダ映画(3) 『大閲兵』

2009-10-10 07:29:11 | 中国・台湾

もともと10月初旬に予定していた中国行きを9月末にずらしたのは、建国60周年の「国慶節」と毎年の「中秋節」が重なっていて仕事にならないからである。ツアーが組めないためか国際線はがらがらだったが、中国の国内線は、旧正月前ほどではないとしても、とても混んでいた。

北京経由は諦めて上海経由を選んだのだが、上海でも「国慶節」入りの前日は午後から交通規制を行っていた。日本に帰ることができなくなると困るので、相当早めに浦東空港に入った。余裕がなくて、とても魯迅の故居や内山書店跡を訪れることなどできず、書店を覗くのが関の山。また中国の旧作DVD(300円程度)をいくつか入手した。『大閲兵』もそのひとつだ。

今回の閲兵とパレードでは、大陸間弾道ミサイルや偵察機など軍事力の増強がメディアを賑している。勿論「中国脅威論」の文脈に乗っているのは言うまでもない。

しかし、『大閲兵』を観ると、それが繰り返しに過ぎないのだと強く印象付けられる。1949年に北部で共産党が国民党に勝ち北京入りした直後、同年10月の毛沢東による建国のスピーチ、1959年の建国10周年記念パレード、1984年の建国35周年記念パレードが、ここには収められている。

1959年のフィルムには、毛沢東が中心であるのは勿論だが、朱徳も大きくフィーチャーされている。周恩来が出るのは当然として、劉少奇がわずかしか紹介されないのは、文革での失脚が影響しているのだろうか。郭沫若の姿も見られる。

1959年からはカラーフィルムとなる。そして1984年においては、鄧小平が主役である。趙紫陽が少しだけ登場する(今年英語版と中国語版で発行された彼の手記を早く読みたいところだ)。なぜかサマランチがいる。

鄧小平は、経済成長の目標や、香港・マカオ・台湾のステイタスについて語る。オープンカーから半身を出して閲兵する姿は、テレビで最近見た胡錦濤の姿とまったく同様だ。フィルムは、文字通り一糸乱れぬパレードを延々と続ける。ざっざっざっざっという足音とともに流される影像を見つめていると朦朧としてきた。

こちらにとっての国慶節は、記念して売り出されていた大きな月餅くらいだ。いつも空港に置いてある月餅は、ことごとく貧弱で高く、買う気がしないのだ。コーヒー、緑豆、海苔などそれぞれ変わった餡が詰められていた。家族でひとつずつ切り分けて食べた。

●中国プロパガンダ映画
『白毛女』
『三八線上』


山西省・天寧寺

2009-10-10 06:22:43 | 中国・台湾

中国山西省の天寧寺玄中寺の近くにある。黄土ばかりが見える土地だが、このあたりは打って変わって森林となっているのが不思議である。樹齢が千年近い柏の樹が何本もある。それらはことごとく捩れており、風水の力だと説明された。


800年以上前の手すり


孔子


※写真はすべてPentax LX、M28mmF2.0、フジPRO400による。

●山西省
太原市内、純陽宮
平遥
池谷薫『蟻の兵隊』
黒酢
白酒と刀削麺

●中国の仏教寺院
玄中寺再訪 Pentax M28mmF2.0(山西省)
浄土教のルーツ・玄中寺 Pentax M50mmF1.4(山西省)
山西省のツインタワーと崇善寺、柳の綿(山西省)
チベット仏教寺院、雍和宮(北京)
道元が修行した天童寺(浙江省)
阿育王寺(アショーカ王寺)(浙江省)