久しぶりにレコード屋を覗いたら、ワゴンコーナーに、ゴンサロ・ルバルカバ『At Montreux』(somethin'else、1990年)があった。当時、キューバ出身、驚異の超絶技術ピアニストということで随分話題になった盤である。久しぶりで嬉しかったのですぐに確保した。それにしても300円・・・。
チャーリー・ヘイデン(ベース)、ポール・モチアン(ドラムス)とのトリオである。というのも、ヘイデンが気に入って仲間に加えたという経緯があるようだ。
目玉は何と言っても冒頭のセロニアス・モンク曲「Well, You Needn't」。モンクならば決してこのようなハイスピードで弾いたわけがない演奏であり、左手と右手が目まぐるしく動いて絡み合うピアノには、当時と変わらず圧倒させられる。キース・ジャレットが演奏する「All The Things You Are」(『Standards Vol.1』、ECM、1983年)を初めて聴いたときと同程度の衝撃でもあった。
その「All The Things You Are」も、ヘイデンの名曲「First Song」も弾いていて悪くないのだが、どうにも1曲目のインパクトが強烈すぎて損をしている感がある。その意味ではCD作品としては良いものとは言えない。
むしろ、同じメンバーで1年前に演奏した記録、チャーリー・ヘイデン+ポール・モチアン+ゴンサロ・ルバルカバ『The Montreal Tapes』(Verve、1989年)の方が落ち着いていて、録音もしっとりしており、何よりこけおどしがなく優れている。ここでの個人的な目玉は、やはりヘイデンの名曲「La Pasionaria」。リベレイション・オーケストラでなくてもドラマチックな盛り上げは十分で、ヘイデンの独特の芳香がするようなベースの音色も、高速で自在に伸び縮みする金属を思わせるモチアンのドラムスも素晴らしい。
一度だけルバルカバのピアノを聴きに出かけたことがあるが、退屈で不覚にも寝てしまった。このピアノトリオならそんなことはないはずで、ぜひ聴いてみたいものだ。他にこの組み合わせによる録音はあるのだろうか。
●参照
○チャーリー・ヘイデンとアントニオ・フォルチオーネとのデュオ
○Naimレーベルのチャーリー・ヘイデンとピアニストとのデュオ
○リベレーション・ミュージック・オーケストラ(スペイン市民戦争)