マリオン・ブラウンが亡くなった。数日前にツイッターで知ったが、亡くなったのは10月10日のこと。ハリウッドで隠遁生活を送っていることは知っていたが・・・。
棚から聴きたいCDを何枚か取り出して聴く。彼のアルトサックスは抒情的と称されるが、ものは言いようで、アタックは強くないし時折音がよれる。しかしどれを聴いてもマリオン・ブラウンの音であり偏愛の対象となる。ちょっと悲しい。
『Passion Flower』(BMG、1978年)は、エリントニアンのアルト吹きジョニー・ホッジスに捧げられたアルバムである。スタンリー・カウエル(ピアノ)、レジー・ワークマン(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラムス)という編成であり、サイドでは中庸的な感覚のワークマンのベースも、乾いたヘインズのタイコも悪くない。「Prelude to a Kiss」や「Solitude」といったエリントン/ストレイホーン曲を朗々と吹いていて、ホッジスのふにゃふにゃに柔らかそうな唇を持たないブラウンの音はどうしても違う。それでも、本人が気持ちよさそうなために、こちらも気持ちが良い。
『Live in Japan』(DIW、1979年)は弘前でのライヴ。名曲「November Cotton Flower」を静かに吹いて聴客を黙らせたあと、ノリのいい「La Placita」、ここでアルトの音が意余ってよれる、それがまた嬉しい。水橋孝(ベース)のサポートは調和的すぎて違和感がある一方、デイヴ・バレル(ピアノ)のソロが素晴らしい。ウォーレン・スミス(ドラムス)を加えたカルテットである。
『Porto Novo』(Black Lion、1967・1970年)には2つのセッションが収録されている。1967年のものは、ハン・ベニンク(ドラムス)が入ったピアノレス・トリオであり、後年のブラウンよりも尖っていて抒情に逃げていない。乾いた音空間で、ハン・ベニンクの破天荒前史の活きた破裂音が響いている。そして1970年のものはレオ・スミス(トランペット)とのデュオであり、ふたりともパーカッションを多用する。のちのプリミティヴ性を過剰に押しだしたインパルス諸作への道が見えているようだ。
来月になったら、また『November Cotton Flower』を取り出して聴こう。
●参照
○November Cotton Flower
○ワダダ・レオ・スミス『Spiritual Dimensions』
○ワダダ・レオ・スミスのゴールデン・カルテットの映像
○ハン・ベニンク『Hazentijd』
○ビリー・ハーパーの新作『Blueprints of Jazz』、チャールズ・トリヴァーのビッグバンド(カウエル登場)