『けーし風』第69号(2010.12、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した。参加者は9名。
今号では、「県知事選挙をふりかえる」(伊波・元宜野湾市長が仲井眞知事に敗れた選挙)、それから、先日亡くなった屋嘉比収氏の特集が組まれている。表紙は瀬底島だそうである。
こんな話が出た。
○国が名護市(辺野古の現況調査を拒否)に対し、行政不服審査法に基づく異議申し立てをした(>> リンク)。この法律は本来、国民が国に対して用いるものであり、国が使うなど本末転倒。仮に名護市が拒否すれば、行政訴訟になるのではないか。
○県知事選での伊波候補落選について、戦略や戦術の面からの分析に偏り過ぎている(悪者探しさえもある)。本来は政策面での違いに焦点を当てるべきであった。
○伊波候補は落選したとは言え、仲井眞知事が「普天間の県外移設」を掲げざるを得ない状況を作った。その意味で、「経済vs.基地」という争点が薄れた。ただし、「経済の仲井眞」とは中身のないイメージである。
○知事選では病院・医療関係者が組織的に仲井眞支持に回った。建設はそうではなかった。背景がよくわからない。
○仲井眞知事は「集票カード」を大量に利用した。これは支持すると有権者に書いてもらい、自陣営の投票数の把握を事前に行うためのものであり、それに書いた有権者には投票の呪縛となる。
○事前投票が組織票を生む。また、実は投票率を下げる(家族全員で出かけるというイベント性がなくなるため、など)。以前の面倒だった「不在者投票」よりも簡単になった。
○伊波候補は「普天間では現在200人の雇用、返還され跡地利用すれば3万2000人の雇用」、「軍用地料は年間64億円、跡地利用すれば4500億円の経済効果」と発言している。しかし、話が具体性に乏しく、まだ訴求力を欠く。北谷の成功とは異なり、たとえば宜野湾では地権者がたくさんいるため、まとまった利用は難しい。読谷村の「象のオリ」跡地も同様の理由で更地のまま。
○基地跡地の利用による経済効果については、大田昌秀は楽観論者、来間泰男は悲観論者。来間泰男によると、比謝川の南なら生産力がアップするが北は下がるとしている。
○伊波候補は運動畑であり、語り口が硬すぎた。「ゆるキャラ」というアイデアもあったが、確かにネックだった。
○名護市への「ふるさと納税」を利用した再編交付金に頼らない予算づくり(>> リンク)については、昨年から運動がなされていた。既に400万円くらい集まっている。今回は改めて新崎盛暉が中心に呼びかけたもの。目取真俊が既存の税金システムを使うことを理由とした異論を唱えているが、そういった異論に関し、新崎氏は「相当的外れだ」と発言している。
○名護市予算については詳細がよくわからない。この方向に追随していた宜野座村は軟化した。
○宮古では航空自衛隊のレーダー基地が増強され、また伊良部島への橋が建設されているなど、自衛隊強化の動きがある。地元にも相当の危機感が芽生えてきている。しかし米軍に対する抵抗とは異なり、また沖縄本島に比べて軍隊アレルギーが薄い。賛成の声もある。
○高江の工事強行が実際に何を目的になされているのか見えにくい。3月からノグチゲラ保護のために工事ができないので、その前の形づくりという側面があるのではないか。
○嘉陽海岸(辺野古崎の北側、ジュゴンの餌場)で、「住民参加型エコ・コースト事業」という名前の護岸工事が進められているとある。これは何か。
○「沖縄オルタナティブメディア(OAM)」(>> リンク)の寄稿において、路面電車導入のことに触れられていた。ゆいレールは短く、バスは高く、自家用車で交通渋滞する沖縄にあって、確かに必要な公共交通のはず。ケービン復活はどうか。
●参照
○「名護市へのふるさと納税」という抵抗
○『世界』の「普天間移設問題の真実」特集(伊波洋一)
○『沖縄基地とイラク戦争 米軍ヘリ墜落事故の深層』(伊波洋一・永井浩)
○押しつけられた常識を覆す
○屋嘉比収『<近代沖縄>の知識人 島袋全発の軌跡』
○『けーし風』2010.9 元海兵隊員の言葉から考える
○『けーし風』読者の集い(11) 国連勧告をめぐって
○『けーし風』読者の集い(10) 名護市民の選択、県民大会
○『けーし風』読者の集い(9) 新政権下で<抵抗>を考える
○『けーし風』読者の集い(8) 辺野古・環境アセスはいま
○『けーし風』2009.3 オバマ政権と沖縄
○『けーし風』読者の集い(7) 戦争と軍隊を問う/環境破壊とたたかう人びと、読者の集い
○『けーし風』2008.9 歴史を語る磁場
○『けーし風』読者の集い(6) 沖縄の18歳、<当事者>のまなざし、依存型経済
○『けーし風』2008.6 沖縄の18歳に伝えたいオキナワ
○『けーし風』読者の集い(5) 米兵の存在、環境破壊
○『けーし風』2008.3 米兵の存在、環境破壊
○『けーし風』読者の集い(4) ここからすすめる民主主義
○『けーし風』2007.12 ここからすすめる民主主義、佐喜真美術館
○『けーし風』読者の集い(3) 沖縄戦特集
○『けーし風』2007.9 沖縄戦教育特集
○『けーし風』読者の集い(2) 沖縄がつながる
○『けーし風』2007.6 特集・沖縄がつながる
○『けーし風』読者の集い(1) 検証・SACO 10年の沖縄
○『けーし風』2007.3 特集・検証・SACO 10年の沖縄