NHKの『SONGS』で2週続けて放送された山口百恵の特集を観て以来、やっぱり百恵は凄い歌手だったと思っている。何しろ百恵が21歳で引退したとき私は10歳にもなっていなかったから、ヒット曲を覚えてはいても、それ以上の存在ではなかった。今観ると、あの眼と肝が据わった存在感と歌唱力であの年齢とはあり得ない。
そんなわけで、百恵のLPをひと山いくらで入手した(でも、忙しくてあまり聴けていない)。篠山紀信による百恵の写真展も最近都内で開かれていて随分観に行きたかったのだが、結局行けずじまい。その代わりに、篠山紀信の写真がジャケットを飾った作品、『曼珠沙華』(1978年)と『ア・フェイス・イン・ア・ヴィジョン』(1979年)を繰り返し聴く。
ハイキーなジャケット写真が目を引く『曼珠沙華』には、「曼珠沙華」と「いい日旅立ち」が収められている。何と言っても谷村新司による「いい日旅立ち」、ヘンな歌詞だが名曲である。どうしてもJRのコマーシャルを思い出してしまうぞ。阿木・宇崎コンビによる曲は「曼珠沙華」を含め3曲あるが、それよりは他のアンニュイな曲のほうが好みである。
『ア・フェイス・イン・ア・ヴィジョン』は、篠山紀信の写真をフィーチャーしたNHK特集の音楽であったようで、LPの中にも写真集が入っている。これまで篠山写真に感じたことなど一度もないが、これは素晴らしい。商業の怪物を撮ると篠山は天才だ。
こっちで目立つ曲は逆に阿木・宇崎コンビの「美・サイレント」と「夜へ・・・」だ。それにしても、戦略とは言え、過激な歌詞を歌わせたものだね。
Be silent, be silent, be silent, be silent
あなたの○○○○が欲しいのです
燃えてる××××が好きだから
(※伏字の部分は歌わない)
「夜へ・・・」は、渚ようこが『あなたにあげる歌謡曲 其の一』においてカバーしている曲だった(>> リンク)。渚ようこも悪くないが、こう聴いてみると、20歳の百恵が断然格上である。
ええい、篠山展に足を運べなかったことがつくづく悔やまれる。