ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(Thirsty Ear、2005年)はピアノトリオ作品で、多彩・多作なパーカーであるからこそ聴きたくなるというものだ。ずっと気になっていて、最近中古盤を入手した。
William Parker (b)
山本恵理 (p)
Michael Thompson (ds)
フリージャズ地獄への招待状とも言うべき怪作、田中啓文『聴いたら危険!ジャズ入門』(>> リンク)では、パーカーのベースを評して「重さと速さが同居している」と書いている。まさに共感を覚える個性であって、わたしは、このことを、ラオウの剛の拳とトキの柔の拳を持つのだと自分に説明していた。たぶん同じ音が脳内で響いている。
ここでは、神経質なほど切れそうで繊細な山本恵理のピアノを得て、さまざまな曲想を試している。おそらくはチャールズ・タイラーに捧げられた「Song for Tyler」。ジャキ・バイアードの悠然として現実離れした和音を思い出させる「Jaki」。バド・パウエルのどこかおかしいバップライクな「Bud in Alphaville」は、何と、ジャン・リュック・ゴダール『アルファヴィル』からのインスピレーションも同居している。全体を通して聴くと、抒情的であったり、幽玄的であったりもする。そして、パーカーのベースは、腰から下が微動だにせず、上はさまざまな生き物に化けているようだ。大きなスピーカーで聴くと陶然とする。
やはりパーカーのライヴに接したい。
●参照
○ウィリアム・パーカーのベースの多様な色
○ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集
○ジョー・ヘンダーソン+KANKAWA『JAZZ TIME II』、ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』 オルガン+サックスでも随分違う
○ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』
○エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(ウィリアム・パーカーが語る)
○ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(ウィリアム・パーカーが語る)
○サインホ・ナムチラックの映像(ウィリアム・パーカー参加)
○ペーター・ブロッツマン(ウィリアム・パーカー参加)
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ウィリアム・パーカー参加)