Sightsong

自縄自縛日記

テレビドラマ『運命の人』

2012-03-19 01:08:35 | 沖縄

TBSのドラマ『運命の人』、全10話が終わった。国家支配のかたち、外交のあり方、国民の権利などが「下半身問題」にすり替えられていった様子も、メディアの機能不全ぶりも、構造的な沖縄差別も、ややデフォルメし過ぎている感があるものの描かれていて、それなりに面白く観ることができた。

以下、忘れないうちに、気になること。

○西山記者も、蓮見喜久子氏も、佐藤栄作首相も、あまりにも美男美女で堂々としすぎていて違和感だらけ。千野皓司『密約 外務省機密漏洩事件』(1978年)のほうが、そうでないだけリアルだった。
○読売新聞のナベツネをモデルにしたという「山部記者」が、やたらと「いいところ取り」をしている。ナベツネは現実と違うといって激怒したが、実はポーズで、何かあったんじゃないの~?(下司の勘繰り?)
○佐藤首相退陣後の田中、福田、大平、中曽根らの描き方がかなりおざなり。特に大平(「小平」)は密約問題と党内抗争とを関係付けてみられることもあっただけに、突然出なくなったのは不自然(西山氏はドラマを観て、自分は大平に土下座なんかしていないと言ったとか)。
○明らかに政権寄りの判決をくだした司法の動き、特に政治家からの策動だってあったはずだ。ドラマならそれくらい描いてほしかった。
○最終回のみで沖縄が描かれるが、詰め込もうとしたために滅茶苦茶なデフォルメになってしまった。1995年の米兵による少女暴行事件や、2004年の沖縄国際大学へのヘリ墜落事件(中学校ということになっている)が、すべて80年代の同じような時期に押し込められてしまった。
「集団自決」の描写もやや不自然ではあったが、ここまで取り上げたことで可とする。(日本軍が中国で残虐行為を行っていたがために、今度は自分たちがやられると考えたという台詞も盛り込んでいる。)
○2000年に米公文書館で密約の証拠書類を発見した我部政明氏(琉球大学教授)役の「琉球国際大学・我楽助教授」が登場するのは愉快だった。

●参照
澤地久枝『密約』と千野皓司『密約』