Sightsong

自縄自縛日記

加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』

2012-03-20 11:54:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』(Kaitai Records、1976年録音)を聴く。同メンバーによる『新海』(>> リンク)の前日の録音である。

加古隆 (p)
高木元輝 (reeds)
豊住芳三郎 (ds)

A面の「滄海」では、聴客の唾を呑みこむ音さえ聞こえそうな緊張感のあるなかで、高木元輝の肉声のような音がじわじわと時空間を支配していく。やがて豊住芳三郎、加古隆が入ってきて音楽を創りあげていく。

B面には、何と「Nostalgia for Che-ju Island(済州島への懐い)」が収録されている。豊住芳三郎+高木元輝『If Ocean Is Broken(もし海が壊れたら)』(1971年)にも収録された曲である。この4年前の演奏が直情的なものであったのに比べ、ここでは、音や情の発露が抑制されているようだ。時に、サックス2本でのローランド・カークが得意とした奏法もみせる。素晴らしい演奏の記録である。

やはり、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ「苦悩の人々」のメロディが引用されており、『モスラ・フライト』(1975年)ではそのタイトルで記録している。いやむしろ、引用ではなく、「Nostalgia for Che-ju Island」はすなわち「苦悩の人々」そのものではなかったか。朝鮮半島をルーツとする高木元輝こと李元輝にとって、この曲の演奏は、済州島の受苦に向けられたものではなかったか。そんなふうに想ってみた。


高木元輝、渋谷(2000年) Pentax MZ-3、FA50mmF1.4、TMAX3200、フォルテ・ポリウォームトーンプラスRC、2号フィルタ使用

●参照
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』
高木元輝の最後の歌


OKI meets 大城美佐子『北と南』

2012-03-20 00:41:36 | 沖縄

OKI meets 大城美佐子『北と南』(Tuff Beats、2012年)を繰り返し聴いている。大城美佐子は沖縄民謡における唯一無二の存在、初めて聴くOKIはアイヌの弦楽器トンコリの使い手。

美佐子先生は年々枯れてきている、と書くと、それは嘘であることに気が付く。枯れてなどはいない、生木そのものである。古い録音で聴けるようには、樹液を周辺にまき散らす若い樹でないだけだ。むしろ癖だけが残って、いまや、樹液が強烈な生の匂いを持っている。

これには、OKIの一風変わったグルーヴも貢献している。思い出したのは、登川誠仁『スピリチュアル・ユニティ』(2001年)だった。唐突にも思えるソウル・フラワー・ユニオン参加により、大御所の個性がマーカーペンでも塗ったようにくっきりと現れてきたのだった。本盤における美佐子先生の存在感も、同様の効果によって浮き上がってきたのに違いない。

ちょっと感動的であり、1回目に聴いたときに意外と抵抗がないなと思った程度だったのに、聴き続けるとどんどん胸がやられてくる。大推薦。


大城美佐子、代官山(2007年) Leica M3、Elmarit 90mm/f2.8(初代)、T-MAX400(+2増感)、Gekko(2号フィルタ)

●参照
大城美佐子&よなは徹『ふたり唄~ウムイ継承』
大城美佐子の唄ウムイ 主ン妻節の30年
代官山で大城美佐子を聴いた
Zeiss Biogon 35mm/f2.0 で撮る「島思い」
Leitz Elmarit 90mm/f2.8 で撮る栄町市場と大城美佐子
高嶺剛『夢幻琉球・つるヘンリー』 けだるいクロスボーダー(大城美佐子主演)
『ゴーヤーちゃんぷるー(大城美佐子出演)
知名定男の本土デビュー前のレコード(大城美佐子との『十九の春/二見情話』、瀬良垣苗子との『うんじゅが情どぅ頼まりる』)