Sightsong

自縄自縛日記

ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』

2014-05-28 23:24:54 | ヨーロッパ

ジョージ・オーウェル『カタロニア讃歌』(岩波文庫、原著1938年)を読む。

1936年、オーウェルはフランコ将軍の反乱軍に抗するため、個人として、共和国を応援する民兵部隊に参加する。フランコ側を独伊のファシズム国家が支援し、英仏は直接には干渉しない方針を取った。ファシズムとの闘いという意義をわがこととして身を投じたのは、スペイン国内のみならず、世界中から集まった義勇兵たちでもあった。その意味で、スペイン内戦はまたスペイン市民戦争でもあった。

オーウェルが属した組織は、労働者による革命を先行させようとしたPOUM(マルクス主義統一労働者党)。その他に、アナキズム色の強い組織や、ソ連が支援する共産主義組織があった。オーウェルが体験し、見たものは、革命よりも中産階級・ブルジョアを含む層を取り込んだ国家形成の方を先行させようとする共産主義組織による醜い同胞粛清であり、それはソ連の意向を汲んだものなのだった。

このルポルタージュは、スペイン戦争が単純な図式によって語りうるものでないことを、生々しく示すものだ。オーウェルが共感し、伝えたかったことは、後付けの歴史の欺瞞、そして、ファシズムに抗するために集まった人びとの連帯感の実感なのだろうと思える。

オーウェルが英国に戻ったあと、フランコが内戦に勝利し、日本は、早々にフランコ政権を支持した。フランコ独裁体制は、その後、1975年まで続くことになる。すなわち、この歴史は現在と地続きのものである。

●参照
スペイン市民戦争がいまにつながる
ギレルモ・デル・トロ『パンズ・ラビリンス』
室謙二『非アメリカを生きる』


万年筆のペンクリニック(6)

2014-05-28 07:37:34 | もろもろ

新宿西口の「キングダムノート」は楽しい万年筆店で、売り物の半分が中古品。覗くと、大概は数人の先客がいて、ガラスケースの中を凝視している(中古カメラ店と同じ光景)。

先日、イタリア・スティピュラエトルリアという万年筆をここで入手した。ロングセラーだが、ペン先が14Kの現行品と違い18K。何でも、ペン先とクリップに刻んである模様は、イタリアのアカントという葉であり、また、ペン軸のふくらみはトスカーナの大地だということである。

謂れはともかく、欲しかったこともあって、使っていて気持ちがいい。ただ、書き出しが渋かったので、ここで開かれたペンクリニックを予約し、仲谷ドクターに診ていただいた。「ねじれを取り、角を落とした」結果、また快適になってしまった。

当日の様子がツイッターにアップされていた

●参照
万年筆のペンクリニック
万年筆のペンクリニック(2)
万年筆のペンクリニック(3)
万年筆のペンクリニック(4)
万年筆のペンクリニック(5)
本八幡のぷんぷく堂と昭和の万年筆
沖縄の渡口万年筆店
鉄ペン
行定勲『クローズド・ノート』