本田竹広『The Trio』(トリオレコード、1970年)。「竹彦」名義の時代か「竹曠」名義の時代か、再発時に修正されていたりもするのでよくわからない。
Takehiro Honda 本田竹広 (p)
Yoshio Suzuki 鈴木良雄 (b)
Fumio Watanabe 渡辺文男 (ds)
活躍しはじめたころ、このピアニストはエネルギッシュなプレイで有名であったようで、「一晩で絃を3本切った」とか「遠くでも音が聞こえた」といった逸話があったという。わたしは90年代の終わりころにいちどケイコ・リーの歌伴を観ただけなのではあるが、そのときの実感とは異なる。どちらかといえばブルージーで抒情溢れる演奏に陶然としたような印象が強い。
そんな思い込みでこのような昔の演奏も聴いてしまい、耳にバイアスがかかっているのかもしれない。それは許してもらうとして、本当にうっとりとしてしまうほど沁みる。いまは手放してしまって手元にないが、前作の『本田竹彦の魅力』における「ヘイ・ジュード」なんて、脳内で再生できるほど最高の演奏だった。もっとライヴに行けばよかった。