Sightsong

自縄自縛日記

アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『Null Sonne No Point』

2015-12-31 16:17:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

ニコラス・フンベルト&ヴェルナー・ペンツェル『Null Sonne No Point』(1997年)を観る。

アート・アンサンブル・オブ・シカゴによるパフォーマンス前を撮ったドキュメンタリーである。

カメラは引くことなく、ほとんど、かれらの顔や口や手のアップを狙いつづける。この2年後にレスター・ボウイが亡くなるのかと思うと胸が衝かれるような気分にさせられてしまうが、葉巻を加え、大きな目をらんらんと光らせ、指示したりラッパを吹いたりするボウイの姿には、確かに魅かれてしまう。悠然としたロスコー・ミッチェルやドン・モイエもまた同様だ。

そして、2004年に亡くなることになるマラカイ・フェイヴァースは、思索的に語っている。「わたしは信じるよ、死が訪れても、生は終わりはしないのだと。」

アート・アンサンブル・オブ・シカゴは、常に来るべきものとしてあり続ける。ジョゼフ・ジャーマンが抜け、ボウイが亡くなり、フェイヴァースが地球での生を終えてシリウスに帰ったあとも。

●参照
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『LUGANO 1993』
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『苦悩の人々』
アート・アンサンブル・オブ・シカゴ『カミング・ホーム・ジャマイカ』
ロスコー・ミッチェル『Celebrating Fred Anderson』
ロスコー・ミッチェル+デイヴィッド・ウェッセル『CONTACT』
ジャック・デジョネット『Made in Chicago』(ミッチェル参加)
サニー・マレイのレコード(ミッチェル参加)
ムハール・リチャード・エイブラムスの最近の作品(ミッチェル参加)
ドン・モイエ+アリ・ブラウン『live at the progressive arts center』、レスター・ボウイ
マラカイ・フェイヴァースのソロ・アルバム
マラカイ・フェイヴァース『Live at Last』 
ジョゼフ・ジャーマン
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』
『苦悩の人々』再演
ユセフ・ラティーフの映像『Brother Yusef』(ニコラス・フンベルト&ヴェルナー・ペンツェル)
ニコラス・フンベルト『Wolfsgrub』


マニー・ピットソン『ミニー・ザ・ムーチャー』、ウィリアム・マイルズ『I Remember Harlem』

2015-12-31 15:21:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

マンハッタン・ハーレム地区のドキュメンタリーを2本。

■ マニー・ピットソン『ミニー・ザ・ムーチャー』(1981年)

VHSで入手した。

黒人が現在よりもさらに抑圧されていた時期、1930-40年代に、かれらの芸能はハーレム地区で花開いた。ここでの案内役はキャブ・キャロウェイ。本当に楽しそうに、うっとりとして、この時期の音楽やダンスを紹介する(何しろ、本人が「生まれ変わってもう一度やりたいかと訊かれれば、やると答えるね」と断言しているのだ)。

白いスーツからはじめてダボダボのスーツを身にまとい、大迫力で歌って踊るキャブ・キャロウェイ。貫禄たっぷりのサッチモやデューク・エリントン。ビリー・エクスタインはスマートでイカしている。口を大きく開けて色気たっぷりに歌うナット・キング・コール(キャブがはっきり発音するようにと助言したらしい)。ファッツ・ウォーラーはいつも笑いながら、眉毛を何センチも動かしながらご機嫌なピアノを弾く。その前ですさまじいタップを踏むビル・ボージャングル・ロビンソン。ここぞとばかりのタイミングでピアノを挟むカウント・ベイシー。美しいリナ・ホーン。

もう、信じられないほどカッチョ良く、魅力的だ。思わず破顔し身体をムズムズさせながら観てしまう。

もちろんキャブの言うように、成功者はごく一握り。差別や抑圧のなかで培われた文化である(家賃が払えないために家で演奏やダンスを行うパーティーを開き、それを家賃にあてたなんて、圧倒されてしまうな)。だが、素晴らしい音楽としても、いまも聴かれるべきものとして存在し続けていることがわかる。

■ ウィリアム・マイルズ『I Remember Harlem』

ハーレム地区の路上で売っていて、1ドルで買った。予想通りというべきか、テレビ番組の汚いダビングものだった。

そんなわけで適当に流して観ていたのだが、なぜかジャズとスポーツがセットになって紹介される。レスター・ヤング、チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピー、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン。野球ではジャッキー・ロビンソンやウィリー・メイズ。ボクシングではシュガー・レイ・レナード。

そして嬉しいことに、そのときバックにかかる音楽は、マイルス・デイヴィス『Milestones』でのタイトル曲であり、偶然にもこの間再聴して、キャノンボール・アダレイのアルトソロは最高そのものだと思っていたところだった。

●参照
ジーン・バック『A Great Day in Harlem』
2015年9月、ニューヨーク(2) ハーレム
2014年6月、ニューヨーク(4) ハーレム
ハーレム・スタジオ美術館再訪(2015年9月)
ハーレム・スタジオ美術館(2014年6月)
MOMA PS1の「ゼロ・トレランス」、ワエル・シャウキー、またしてもビョーク(ロレイン・オグラディ)
ナショナル・アカデミー美術館の「\'self\」展(ハーレムで活動するトイン・オドゥトラ)


2015年の「このCD・このライヴ/コンサート」

2015-12-31 10:31:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」の「このCD・このライヴ/コンサート」において、以下の4つを挙げさせていただきました。

●CD(国内編) 『纐纈雅代/Band of Eden』
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_cd_2015_local_09.html

●CD(海外編) 『Jack DeJohnette / Made in Chicago』
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015b/best_cd_2015_inter_09.html

●ライヴ/コンサート(国内編) 『うたをさがして』
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html

●ライヴ/コンサート(海外編) 『Chris Pitsiokos』
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015b/best_live_2015_inter_06.html

他の方々のセレクトも興味津々。

●CD(国内編)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/cd2015a.html

●CD(海外編)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015b/cd2015b.html

●ライヴ/コンサート(国内編)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/live2015a.html

●ライヴ/コンサート(海外編)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015b/live2015b.html