Sightsong

自縄自縛日記

『けーし風』読者の集い(31) 「生きる技法」としての文化/想像力

2016-07-24 08:33:24 | 沖縄

『けーし風』第91号(2016.7、新沖縄フォーラム刊行会議)の読者会に参加した(2016/7/24、神田公園区民館)。参加者は8人。

主に以下のような話題。

●参院選の沖縄選挙区で伊波洋一氏が自公推薦の現職・島尻安伊子氏を大差(35.6万、対、25.0万=10万票以上の差)で破った翌日から、その「民意」とは正反対の高江の工事があからさまに強行された。
●これは、2014年沖縄県知事選における翁長(36.1万)、対、仲井眞(26.1万)の票差よりも大きかった。沖縄の「民意」が容易に変わることはない。日本との溝がさらに目立ってきた。
●高江の状況が済州島四・三事件と重なってみえる。かつて捨て石とされたマージナルな島で、過剰にアメリカの意を汲んだ暴力装置が発動され、そのことが不可視にされようとしているという点で。
●高江がこのような強権政治のターゲットとなり、一方、辺野古はどうなのか。やはり参院選後に、政府は沖縄県を相手取り、辺野古の違法確認訴訟を起こした(2016/7/22)。本誌には、北上田毅氏により、防衛局は辺野古の埋立工事に入ることができないとする理由が挙げられているのだが。
●日本の「基地引き取り論」。先日の「AERA」の沖縄特集でも、対談において、論を手動する高橋哲哉氏に対して、目取真俊氏は現実性のない話だとした。
大城立裕『カクテル・パーティ』が映画化された。アメリカの困窮から海兵隊に入ったはずの黒人兵が、沖縄においては、沖縄人を差別する。この「権力の中二階」。高江においてはどうなのか。
●保守与党の支持者には、自分では「差別意識」を持っていないと考えている市民が少なくない。それは事実認識と歴史認識が決定的に足りていないからだろうが、さて、それをどのように解決すればよいか。教育現場さえ上から決められたこと以外を話せない状況で。
●大きな経済にのみ呑みこまれることのない、コミュニティ単位・地域単位の経済とは。それをナショナリズムに利用されないようにするには。
●参院選では、市民が直接痛い目にあった地域(沖縄、福島)では既存の政治に否を出した。では、痛い目をみないと解らないのか。
SNS(特にFaceBook)における雰囲気は世論ではない。そのひとつが三宅洋平現象ではないのか。
●現場を通じて沖縄から日本へ広まっていった役割はとても大きかった。従来の「戦争は嫌」という漠とした一般論から、より個人の論へと移行しなければ力を持たない。本誌巻頭言では、若林千代氏が先日の沖縄での被害者が「私だったかもしれない」とのことばを書いた。屋嘉比収氏は、「<自分だったらどうするか>を繰り返さなければならないと説いた(『沖縄戦、米軍占領史を学びなおす』において説いている「分有」とも関連か)。仲宗根政善氏は、戦地に置き去りにした教え子と生きて再会し、ひめゆり学徒たちの体験記(仲宗根政善『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』)をまとめることを決意した。石牟礼道子氏は、水俣病で死にゆく人の姿に接し、そのことが『苦海浄土 わが水俣病』などを書かせる力となった。
●本誌に登場する山城知佳子氏の「アーサ女」(「沖縄・プリズム1872-2008」)は、身体のアートによって生政治にもコミットするものだった。その後の映像作品「肉屋の女」は、嘉手納の黙認耕作地において撮られた作品であり、これもまた同様に沖縄でなければ出来ない作品だった。
シンポジウム「コザ暴動プロジェクト in 東京において、倉石信乃氏は、「本土」を媒介せず沖縄から自律的につくられたアートとして、山城知佳子氏に加え、石川竜一(>> 木村伊兵衛賞受賞)、ミヤギフトシ(「六本木クロッシング2016展」に出展中)、根間智子の各氏の名前を挙げた。こういったアートの力は社会にどうコミットし変えていくか。
●いま、アイヌ新法制定の検討を前にしている。1984年の北海道ウタリ教会(現・北海道アイヌ協会)でのアイヌ新法要望決議はどうだったか。民族特別決議の要望は、議席数が多すぎるとして自ら取り下げることになった。また自立化基金も縮小された。

●紹介された本・映画・集会・食べ物
●洪ユン伸『沖縄戦場の記憶と「慰安所」』(インパクト出版会)
●陣野俊史『テロルの伝説』(河出書房新社)
●進藤榮一、木村朗編『沖縄自立と東アジア共同体』(花伝社)
●「あけもどろ」2014・15年合併号 特集「歴史を拓くはじめの家うちなぁ20周年特別号」
●第1回与那国映画まつり in 東京 『与那国カウボーイズ』『はての島のまつりごと』 2016/8/13 14:30/17:40 北とぴあ
●辺野古新基地建設断念を求める全国交流集会 2016/7/31 10:00-18:00 連合会館、全電通会館ホール
●「辺野古土砂搬出反対」全国連絡協議会ニュース 
●「平輪ちんすこう」(若竹福祉会)。ラードが使われておらず、また黒糖の味が際立っていてとても旨い。普天間飛行場を、いっそのこと、食べてなくしてしまえ!という願いがこめられている。

●参照
『けーし風』