Sightsong

自縄自縛日記

サインホ・ナムチラック『Like A Bird Or Spirit, Not A Face』

2016-07-26 22:20:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

サインホ・ナムチラック『Like A Bird Or Spirit, Not A Face』(Ponderosa Music & Art、2016年)を聴く。

Sainkho Namtchylak (vo, g)
Eyadou Ag Leche (b, g, vo)
Said Ag Ayad (perc)
Ian Brennan (loops)

ベースとパーカッションのふたりはマリ共和国を拠点とするトゥアレグ人のグループ・ティナリウェンのメンバーである。それゆえ、ジャケットの裏側には、ティンブクトゥにある砂のモスクが印刷されている。もちろんサインホはモンゴル文化圏のトゥヴァ共和国出身のヴォイス・パフォーマーだ。

このまったく異なる文化を背景に持つ者たちが、驚くほど親和性をもった音楽を展開している。サインホの喉歌はもともとトゥヴァのホーメイだが、ここでは、アフリカの女性が鳥の叫びのごとく甲高い声で鳴らす喉歌に近いものも披露している。

そしてサインホ自身のヴォイスは、かつての、壁も窓ガラスも鼓膜も突き破るような、また地の底から低音で唸るような突破的なものでは、もはやない。もちろんそのような要素はたくさんある。恐ろしさもある。しかしその一方で、愛らしさもある。

これは成熟と呼ぶべきなんだろうね。優しく英語で唄う「The Snow Fall Without You」など、サインホの活動の到達点と言ってもいいのではないか。

●参照
サインホ・ナムチラック『TERRA』(2010年)
サインホ・ナムチラックの映像(2008年)
モスクワ・コンポーザーズ・オーケストラ feat. サインホ『Portrait of an Idealist』(2007年)
テレビドラマ版『クライマーズ・ハイ』(2003年)(大友良英+サインホ)


マリオン・ブラウン『Five Improvisations』

2016-07-26 06:00:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

マリオン・ブラウン『Five Improvisations』(B.Free Records、1977年)を聴く。ドイツのレーベルによる発掘盤のようである。

Marion Brown (as)
Brandon Ross (g)
Jack Gregg (b)
Steve McGreven (ds)

ブランドン・ロスの参加が目を引くが、必ずしもマッチしているとは思えない。ドラムスのスティーヴ・マグレイヴン Steve McGrevenは、アーチー・シェップともよく共演したステファン・マクレイヴン Stephen McCrevenと同一人物ではないのかな。

音はさほど上等ではないが、マリオン・ブラウンの音色を聴くことができるから問題ではない。パワーで鳴らすのではなく、どちらかと言えば細くてよれる。マウスピースから発する甲高いノイズも、息を強く吹き込んでアルトを鳴らし切る付帯物として出てくるのではなく、弱く口の脇から漏れる感じ。音色は柔らかくもなく生硬である。この音がマリオン・ブラウンの抒情になっているから偏愛。

●参照
マリオン・ブラウンが亡くなった(2010年)
November Cotton Flower
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、1995年)