Sightsong

自縄自縛日記

This Is It! @なってるハウス

2017-07-21 08:06:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウスに足を運び、「Tobira-1」あらため「This Is It!」(2017/7/20)。

Natsuki Tamura 田村夏樹 (tp)
Satoko Fujii 藤井郷子 (p)
Takashi Itani 井谷享志 (ds)

いきなりステージ前の談笑とシームレスに演奏が始まっている。井谷さんが布をドラムセットの上に広げ、音の吸収を示しているのだった。やがてシンバルを弓で擦り、藤井さんが内部奏法からスタートする。やがて田村さんがノイズを含めたトランペットを吹き始めた。ドラムスはまるで大波のようなうねりを表現した。

2曲目。3人ともに一音のインパクトではなく、小さなアクションにより発せられる響きを重ね合わせようとした。音楽がそれぞれに渡されてゆき、ストップ・アンド・ゴー。テイジ・イトウによるマヤ・デレンの音楽を思い出させるオリエンタルな響きもあった。どこに連れていかれるのかわからない。

3曲目。田村さんのトランペットの静かなソロから始まり、やがて音圧を高めていく。サウンドが盛り上がり周囲を刺す時間も多いのだが、不思議と、静謐な感じを覚える。井谷さんが選んで発する打楽器の音が、時間を止め、また折りたたんでいくようだった。

セカンドセット。井谷さんのメタロフォンから始まり、やがて藤井さん、田村さんが入る。3人は、きらめく星座のような鮮やかなサウンドの相を、何枚も積み重ねていった。

2曲目、まだできていない曲だという。まるでピアノとトランペットが時間を巧妙にずらせて抜きつ抜かれつの追いかけっこをしているようだ。時間の進み方はもう聴く者にはコントロールできない。

3曲目。藤井さんの冷たくきらめくピアノから始まり、そして、3人でサウンドを熱くも厚くもしていった。4曲目はその勢いもあり、ドラムスの力強いソロもあり、ともかくも駆け抜けた。

複雑で巧妙、冷たくて熱いサウンド。この日、ほとんどは新曲または未完成の曲ばかりが選ばれた。曲の完成に向かうプロセスという形で実験的精神をステージに持ち込み、それが聴き手に大きな刺激を与えるものだった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●参照
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)