Sightsong

自縄自縛日記

喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器

2017-07-29 22:49:41 | アヴァンギャルド・ジャズ

代々木の松本弦楽器に足を運び、喜多直毅・マクイーン時田深山デュオ(2017/7/29)。行きも帰りもすごい雨。

Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Miyama McQueen-Tokita マクイーン時田深山 (koto)

この日は2セットともに完全即興。

ファーストセット。深山さんは十七弦箏の左右を激しく弾き、やがて、選ばれた一音一音に収斂してゆく。静かに始まった喜多さんとともに最初のクライマックスに向かうのだが、それは衝突するのではなく、互いの間を縫うような絡み方だった。喜多さんは弓でヴァイオリンを弾きながら左手の指で弦をはじき、それが箏の和音と重なり、ヴァイオリンが雅楽の楽器のようにみえた。ふたりのすばやい擦り、軋み、それらの中から旋律が立体的に浮かび上がってくる。深山さんは箏の端を使いリズミカルに高音を発し、対する喜多さんはかそけき音から和音を成長させていったのだが、それがなぜかネパールなどの音楽の響きを思わせた。

セカンドセット。はじめはヴァイオリンをギターのように指で弾き始めた喜多さんだが、程なくして弓を手にした。深山さんも弓で箏を擦り、その2本の弓の周波数が互いに近づいたり遠ざかったりする。ヴァイオリンが速度を求めはじめ、箏は端の音の軽さによって速度に応じる。いったん静かに沈み、サウンドは再び動き始める。ヴァイオリンの旋律が妖しい色彩を持ちつつ、まるで糸だけで間接を結わえた人形のように内部に力を持たず崩れてゆく。一方の深山さんは弦を指で強く抑えつつ弾き、音を歪ませた。割れる音も鮮やかな音も発せられる。最後に向かい、ふたりの音がシンクロしてくる。喜多さんはつい先の過去を思い出すかのように静かに旋律をなぞり、深山さんは掌底で箏を叩き、音に鼓動を与え続けた。

ところで、喜多さんはこの日に向けて新しいTシャツを調達していると言っており、わたしも負けじと突然段ボールのTシャツを着て臨んだ。しかし、登場した喜多さんは、なんと、「ムー」のTシャツを身にまとっていた。完敗した。しかしなぜムー。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●喜多直毅
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)


徳永将豪『Bwoouunn: Fleeting Excitement』

2017-07-29 09:15:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

徳永将豪『Bwoouunn: Fleeting Excitement』(Hitorri、2016, 17年)を聴く。

Masahide Tokunaga 徳永将豪 (as)

このサウンドを「音響」などという言葉で括ってしまっては、ぼろぼろと落ちるものの方が多いようである。

3曲のうち、2曲目と3曲目が収録された2か月前のライヴ(徳永将豪+中村ゆい+浦裕幸@Ftarri)を目撃してもいたのだが、そのときの印象もあって、アルト演奏のために身体を鍛錬し、音のかたちを執念で追い詰めていった成果のように思える。ロングトーンの持続も揺れ動きも、ハウリングのような音も、おそらくは、完全にコントロールせんとした結果であるだろう。音の増幅は、筋肉と呼吸、管の共鳴、機械と、まるでひとつながりであり、そのことに驚く。

この演奏を観たときには、出されてしまった音と出している音とのせめぎ合いに思えたのだが、あらためて聴くと、語ろうとすることは既に語られてしまったことだという言葉が浮かんでくる。しかしそれは困難な作業であり、それゆえの驚きに違いない。

●徳永将豪
徳永将豪+中村ゆい+浦裕幸@Ftarri
(2017年)


黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain

2017-07-29 08:34:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

中野のSweet Rainに足を運び、黒田京子・喜多直毅デュオ(2017/7/28)。

Kyoko Kuroda 黒田京子 (p)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)

いきなりハードに攻める「黒いカマキリ」(喜多)において、喜多さんの弦を指ではじく破裂音に眼が醒めた。「ゴンドラの唄」を経て、バルボラが歌ったシャンソン「黒い太陽」において、あらゆる箇所を駆使するようなヴァイオリンのテクニックに驚く。「白いバラ」は、ナチスに抵抗したゾフィ―・ショルに捧げた黒田さんのオリジナル。「ふるさと」(喜多)では、右手のみで旋律を抒情的に弾く黒田さんのピアノも、微かな音でなつかしさを表現したような喜多さんのヴァイオリンも印象的だった。

セカンドセット。「ひまわりの終わり」(黒田)に続き「リベルタンゴ」(ピアソラ)。ふたりの分担が鮮やかに聴こえた。昭和歌謡、布施明が歌った「カルチェラタンの雪」。「Útviklingssang」(カーラ・ブレイ)には驚かされてしまったのだが、あとで台湾料理の味王で黒田さんに訊くと、ORT時代からのレパートリーだという。この曲において、黒田さんは、はじめは単音と和音を組み合わせ、また低い和音でリズムを取ってその上でヴァイオリンをのせるなどして、変奏を薄紙のように繰り返し積み重ねていった。喜多さんはピッチをずらしてゆき、そのズレと軋みとにより、なんとも言えぬ哀しみがあらわれた。そして黒田さんが喜多さんに捧げた曲「闇夜を抱く君に」。アンコールは「My Wild Irish Rose」、軽やかなピアノの上で、ヴァイオリンが蝶のように舞った。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●黒田京子
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン
(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)

●喜多直毅
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)