代々木の松本弦楽器に足を運び、喜多直毅・マクイーン時田深山デュオ(2017/7/29)。行きも帰りもすごい雨。
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Miyama McQueen-Tokita マクイーン時田深山 (koto)
この日は2セットともに完全即興。
ファーストセット。深山さんは十七弦箏の左右を激しく弾き、やがて、選ばれた一音一音に収斂してゆく。静かに始まった喜多さんとともに最初のクライマックスに向かうのだが、それは衝突するのではなく、互いの間を縫うような絡み方だった。喜多さんは弓でヴァイオリンを弾きながら左手の指で弦をはじき、それが箏の和音と重なり、ヴァイオリンが雅楽の楽器のようにみえた。ふたりのすばやい擦り、軋み、それらの中から旋律が立体的に浮かび上がってくる。深山さんは箏の端を使いリズミカルに高音を発し、対する喜多さんはかそけき音から和音を成長させていったのだが、それがなぜかネパールなどの音楽の響きを思わせた。
セカンドセット。はじめはヴァイオリンをギターのように指で弾き始めた喜多さんだが、程なくして弓を手にした。深山さんも弓で箏を擦り、その2本の弓の周波数が互いに近づいたり遠ざかったりする。ヴァイオリンが速度を求めはじめ、箏は端の音の軽さによって速度に応じる。いったん静かに沈み、サウンドは再び動き始める。ヴァイオリンの旋律が妖しい色彩を持ちつつ、まるで糸だけで間接を結わえた人形のように内部に力を持たず崩れてゆく。一方の深山さんは弦を指で強く抑えつつ弾き、音を歪ませた。割れる音も鮮やかな音も発せられる。最後に向かい、ふたりの音がシンクロしてくる。喜多さんはつい先の過去を思い出すかのように静かに旋律をなぞり、深山さんは掌底で箏を叩き、音に鼓動を与え続けた。
ところで、喜多さんはこの日に向けて新しいTシャツを調達していると言っており、わたしも負けじと突然段ボールのTシャツを着て臨んだ。しかし、登場した喜多さんは、なんと、「ムー」のTシャツを身にまとっていた。完敗した。しかしなぜムー。
Fuji X-E2、XF35mmF1.4
●喜多直毅
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)