Sightsong

自縄自縛日記

ハン・ベニンク『Adelante』

2017-07-09 23:20:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

ハン・ベニンク『Adelante』(ICP、2016年)を聴く。

Han Bennink (ds)
Joachim Badenhorst (cl, bcl, ts)
Simon Toldam (p)

冒頭曲でいきなりハン・ベニンクらしく猛烈な勢いで走りはじめる。笑ってしまうほどである。(一時期不調説があったが、今年は来日もするし、元気なら嬉しい。)

一方のリードとピアノのふたりは、ミニマルな印象を受けてしまうほどに地味。しかしそれがよいのである。ヨアヒム・バーデンホルストのクラやバスクラには衒いが皆無だが、マイペースに自分の音楽を展開しており、決して埋没などしないところが面白い。ミシャ・メンゲルベルグの2曲などその淡々さがじわじわくるユーモラスさに転じていて、聴けば聴くほど滋味が浸み出てくる。

●ハン・ベニンク
ハン・ベニンク@ディスクユニオン Jazz Tokyo(2014年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年)

ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)
ハン・ベニンク キヤノン50mm/f1.8(2002年)
エリック・ドルフィーの映像『Last Date』(1991年)
ICPオーケストラ『Bospaadje Konijnehol』の2枚(1986-91年)
レオ・キュイパーズ『Heavy Days Are Here Again』(1981年)
レオ・キュイパーズ『Corners』(1981年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)
アネット・ピーコック+ポール・ブレイ『Dual Unity』(1970年)
ウェス・モンゴメリーの1965年の映像(1965年)

●ヨアヒム・バーデンホルスト
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年)


ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+今井和雄@東松戸・旧齋藤邸

2017-07-09 21:46:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

ミシェル・ドネダ、レ・クアン・ニン、齋藤徹という3人による「MLTトリオ」、本日ツアー初日(2017/7/9)。ゲスト・今井和雄。

場所は東松戸にある「旧齋藤邸」。明治時代に建てられた茅葺きの古い家である(齋藤徹さんとは関係がない)。とても暑い日で駅から歩く間に汗がふき出たが、敷地内は緑が多く爽やかだった。

予定では齋藤徹さんも参加の予定だったが、入院で「不在の在」。ライヴ前には吉報もあった。

Michel Doneda (ss)
Lê Quan Ninh (perc)
Kazuo Imai 今井和雄 (g)

ファーストセット。ドネダの息遣い、風、音色の変化に耳を傾けていると思わず涙腺がゆるんでしまった。

ニンはタイコの上で松ぼっくりを転がしたり、棒や指で擦ったり、シンバルに口を近づけて擦音を発したり。叩くという行動は驚くほど少ない。今井さんは鎖も使ったのだが、なぜかこの場においては過激な感じがしない。

セカンドセット。直前に3人で話し合い、裏の竹林でやるという。何ということか。

どのような響きがするのだろうと期待して竹林に入った。皆が葉っぱを踏み、枝が折れる音。蝶が飛び、虫や鳥の声も時折聴こえる。

驚いたことに、ドネダもニンも楽器を持ってあちらこちらへと気の赴くままに歩いてゆき、立ち止まり、音を出す。今井さんの弦が空間を震わせ、その音が竹や草に吸収されていくさまに、快感を覚えもする。ドネダは虫にも鳥にも変化する。ニンは葉っぱをすくい取り、タイコの上でかき混ぜ、息で吹き飛ばす。そのような作業がつぎつぎに提示される。

素晴らしいものは素晴らしいというトートロジーしか言うことができない演奏。ここにテツさんもいてコントラバスとともに立っていたならと想像するが、それはまた次の機会に体感できるだろう。

終わってから庭で雑談している間も、ドネダは草を見つけてきて笛を吹いたり、ヘンな声を出して遊んだりしていた。また嬉しくなってしまった。

Fuji X-E2、60mmF2.4

●ミシェル・ドネダ
ミシェル・ドネダ『Everybody Digs Michel Doneda』(2013年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
ロル・コクスヒル+ミシェル・ドネダ『Sitting on Your Stairs』(2011年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ミシェル・ドネダ『OGOOUE-OGOWAY』(1994年)
バール・フィリップス(Barre's Trio)『no pieces』(1992年)
ミシェル・ドネダ+エルヴィン・ジョーンズ(1991-92年)

●レ・クアン・ニン
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)

●今井和雄
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
”今井和雄/the seasons ill” 発売記念 アルバム未使用音源を大音量で聴くイベント・ライブ&トーク@両国RRR(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
今井和雄『the seasons ill』(2016年)
Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷(2009年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤、1999年)


沖縄戦首都圏の会10周年記念講演「沖縄差別―ハンセン病と基地問題―」

2017-07-09 10:30:55 | 沖縄

沖縄戦首都圏の会(沖縄戦の史実歪曲を許さず沖縄の真実を広める首都圏の会)が10周年を迎えた。発足当初は、「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」だったわけだが、2011年4月の最高裁判決の後(その経緯は『記録・沖縄「集団自決」裁判』に詳しい)、より対象を広くした名前に変えられたということだろう。わたしも沖縄戦や「集団自決」についての同会の勉強会を何度か聴講していた。今回記念講演があると知り、明治大学リバティタワーに足を運んだ(2017/7/8)。

講演者は、土木技術者であり、またハンセン病の問題にも関わっている方である。

技術者の目からみれば、高江のヘリパッド工事はさまざまな問題を抱えているものであるという。情報開示請求により得られた高江の設計資料には、砕石等のダンプによる運搬費は「後日清算するものとする」と書かれている。すなわち青天井というわけである。またその運搬ルートは、住民の反対運動により道路を回避して国有林内に設置されたのだが、それは表向きの「モノレール」ではなく、森林をもっと伐採して作られたものだった(モノレールでは運搬に何年かかるかわからない)。さらにヘリパッドの造成が突貫で行われたために、斜面が崩れてきて当分は使えないような工事であったという。

ハンセン病と基地問題には、国策によって弱者を排除してきたという共通項があると、氏は指摘する。沖縄にも愛楽園というハンセン病患者の施設があったが、そのほとんどは「らい予防法」に基づく「予防」などではなく、排除であった。また、子どもを産ませないため、断種・堕胎が行われていた。すべて差別に基づく誤った行動だった。

●沖縄戦首都圏の会
沖縄「集団自決」問題(16) 沖縄戦・基地・9条(2008年)
沖縄「集団自決」問題(15) 結成1周年総会(2008年)
沖縄「集団自決」問題(14) 大江・岩波沖縄戦裁判 勝訴!判決報告集会(2008年)
沖縄「集団自決」問題(10) 沖縄戦首都圏の会 連続講座第3回(2007年)
沖縄「集団自決」問題(9) 教科書検定意見撤回を求める総決起集会(2007年)
沖縄「集団自決」問題(4) 沖縄戦首都圏の会 連続講座第1回「教科書検定─沖縄からの異議申し立て」(2007年)


Sono oto dokokara kuruno?@阿佐ヶ谷Yellow Vision

2017-07-09 09:15:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のYellow Visionに足を運んだ(2017/7/8)。久しぶりに柳川芳命さんが東京で演奏する機会であり、また、日本天狗党も観たかったのだ。

■ Hyper Fuetaico

Hyper Fuetaico:
Homei Yanagawa 柳川芳命 (as)
Meg (ds)
guest: 
Teruto Yamazawa 山沢輝人 (ts)

柳川さんは名古屋近辺でいつも活動しており、Megさんは近江八幡のドラマー。(柳川芳命『YANAGAWA HOMEI 2016』でも共演している。)

デュオだが、思い思いに音を発し、互いや自己との間合いを図り、再び音を発する。Megのドラムスは、まるで重力が働く向きを定めて一気に身を投げ出すようなスタイルであり、たいへんな迫力があった。そしてひさびさに柳川芳命の音を体感する。発散せぬよう律しながら、自身の磁場の中で情を朗々と吐露するソロであり、それはやはり濁流のアジアンブルースだった。

2曲目から山沢輝人さんがテナーで参加。濁流のなかに荒々しく介入し、サウンドは情のスープとなった。

■ 日本天狗党

日本天狗党:
Tobio Akagi 赤木飛夫 (as)
Houhi Suzuki 鈴木放屁 (ts)
Kenichi Akagi 赤木憲一 (ds)

鈴木放屁さんは今年橋本孝之さんとの共演を目にして(第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま)、そのテナーにビビっていたのだった。ここでもいきなり入ってきた最初の一音のでかさに思わずのけぞる。マウスピースを深くくわえ、ときに踊るようにしながら、瞬殺の爆音を放ち続ける。

一方の赤木飛夫さんのアルトは、一聴、端正にフレーズを積み上げていくようでありながら、その一音一音は、渾身の力が注入されているように強いものだった。そして赤木憲一さんはバスドラムによって次第にサウンドを高みへと持ち上げてゆく。天高く飛翔する天狗が3人。

そして、柳川・赤木・鈴木・Meg、鈴木・山沢・Megによるセッション。最後などは、鈴木・山沢のふたりともテナーを上下左右に振り回す狼藉ぶりであり、しばしの暴走のあと、なんとか着地した。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

帰りには、この2017年6月4日に録音されたばかりのCD『Hyper Fuetaico IV』をいただいた。

 

●柳川芳命
柳川芳命『YANAGAWA HOMEI 2016』(2016年)
柳川芳命+ヒゴヒロシ+大門力也+坂井啓伸@七針(2015年)
柳川芳命『邪神不死』(1996-97年)
柳川芳命『地と図 '91』(1991年)

●鈴木放屁
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)