Sightsong

自縄自縛日記

『ネイティブ・サン』

2018-07-01 10:55:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

わたしはフュージョン世代でも何でもない。ネイティブ・サンも、むかし、この第1作(1978年)を聴かせてもらってふーんと思った程度。最近妙に聴きたくなってLPのオリジナル盤を手に入れた。

Takehiro Honda 本田竹曠 (key)
Kohsuke Mine 峰厚介 (ts, ss)
Motonobu Ohde 大出元信 (g)
Tamio Kawabata 川端民生 (b)
Hiroshi Murakami 村上寛 (ds)
Damiao Gomes De Souza (cuica)

今さら言うなという感じかもしれないのだが、すんごくカッコ良い。やっぱりね。

70年代のフュージョンサウンドなのだが、本田竹広(このときは竹曠)のキーボードは氏ならではで、沁みるようなブルースも野蛮に飛ぶような勢いもある。A面の「Heat Zone」でのあたたかなソロも、B面の「Twilight Mist」での哀しくもある感覚も、ひたすら、ジス・イズ・ホンダ。うう痺れる。何もこの盤を脇に置かなくても、他のジャズやファンキーな作品と同じである。

そして真っすぐでちょっと音がずれた匂いのある峰厚介のサックスも良いし、村上寛のスタイリッシュなドラミングも最高。

ところでこれによらず、気分がフュージョン回帰。というかもともと限られたものしか聴いていないので、今になって、コミュニティ的で希望があるようなフュージョンのサウンドに惹かれている。なぜだろう。個人の気分?時代か?

そんなときに、播磨のジャズ誌『Voyage』でもネイティブ・サン特集が組まれている。さらに、守谷美由貴・福井アミ・伊地知大輔・ませきゆうと・細井徳太郎というメンバーで「ネイティブ・サン祭り」をやるとの報(2018/8/15、池袋インディペンデンス)。再発見の波が来る前に直系によるネイティブ・サン再興か。それともわたしが気付かなかっただけで何か大きな動きがあったのか。

●本田竹広
本田竹広『BOOGIE-BOGA-BOO』(1995年)
本田竹広『EASE / Earthian All Star Ensemble』(1992年)
本田竹広『This Is Honda』(1972年)
本田竹広『I Love You』(1971年)
本田竹広『The Trio』(1970年)


サリム・ワシントン『Dogon Revisited』

2018-07-01 09:57:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

サリム・ワシントン『Dogon Revisited』(Passin' Thru、-2018年)を聴く。

Salim Washington (ts, fl, oboe, Mbira)
Tyshawn Sorey (ds)
Hill Greene (b)
Melanie Dyer (viola, voice)

テナーは太く迫力があり真っすぐで、オーボエも肺活量のためか強い音を出していて、悪くない。

しかし、ジュリアス・ヘンフィルの「Dogon AD」を演奏しており、それにはメラニー・ダイア―のヴィオラが並走しているのだ。つまり、形としてヘンフィルのオリジナルと比較してしまい、どうしたって分が悪い。逆に言えばヘンフィルの演奏はいつ聴いても最高である。

聴き所は、むしろ、多彩でさらにポテンシャルの巨大さを感じさせるタイショーン・ソーリーのドラムス。


波多江崇行+川下直広+小山彰太(Parhelic Circles)@阿佐ヶ谷Yellow Vision

2018-07-01 08:23:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のYellow Vision(2018/6/30)。

Parhelic Circles:
Takayuki Hatae 波多江崇行 (g)
Naohiro Kawashita 川下直広 (ts, vln, perc)
Shota Koyama 小山彰太 (ds)

ファーストセット。川下さんはヴァイオリンを中心にして間にテナーサックスを挟み、さらにその間には小さいパーカッション。そのヴァイオリンについて、ステージ前後に小山さんが絶妙な軽さだと絶賛していたのだが、軽さはともかく、擦れ音のよれ具合や倍音の具合が確かにとても良い。そして波多江さんのギター表現の振幅の大きさに驚かされる。細かな音を積み重ねてゆき、特に低音を中心としてさまざまな色がわさわさと混じりあったクラスターを創り出し、またときには静かに爪弾く。小山さんも川下さんの楽器の持ち替えや、サウンド全体のそのときの振れ幅に応じて、ノイズが敢えて残るようなドラム、鐘、シンバルを即妙に繰り出してくる。眼前で幻のような音絵巻が予想外に展開し、呑まれているうちに終わった。

セカンドセット。川下さんのノイズ多いテナーソロから始まる。しばらくはギターとのデュオが続いたのだが、ふたりの間がなかなか隙間が多くて素晴らしく、また波多江さんはそれに応じて、金属板でしなるような音、スライド、静かな爪弾きなど、やはり淡々と幅広い表現を行う。あとで訊くと、演奏中は、まるで外から自分自身をレコードのように観察して次の展開を考えているような按配だとのことであり、それゆえ過度にひとつのものだけに没入しない結果となるのかもしれない。川下さんがヴァイオリンに持ち替えると、ギターはあたたかいトーンとなった。ここで絶妙に小山彰太スタイルとしか言いようのないドラムス参入。騒めきの中でギターが浮上した。

30分が経ち、終わった途端に、小山さんがいきなりブラシで叩きはじめた。演奏再開、そしてやはり独特なドラムスによる独特なタイム感の創出。波多江さんはまるでジョー・パスのように歌を弾く。そのひとつひとつの音に揺らぎがあって、まさにこれも幻日環(パーヘリック・サークル)なのかもしれなかった。川下さんがヴァイオリンで入ってきて、「When I Fall in Love」のような旋律を弾く。その世界は昔のジャズでも昭和歌謡でもあった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●波多江崇行
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』
(2017年)

●川下直広
川下直広カルテット@なってるハウス(2017年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)
川下直広@ナベサン(2016年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
川下直広『Only You』(2006年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
川下直広+山崎弘一『I Guess Everything Reminds You of Something』(1997年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年) 

●小山彰太
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)
立花秀輝『Unlimited Standard』(2011年)
2000年4月21日、高木元輝+不破大輔+小山彰太(2000年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999-2000年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)


ダニエル・カーター+ウィリアム・パーカー+マシュー・シップ『Seraphic Light』(JazzTokyo)

2018-07-01 01:02:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダニエル・カーター+ウィリアム・パーカー+マシュー・シップ『Seraphic Light』(AUM Fidelity、2017年)。傑作。

>> #1532 『Daniel Carter – William Parker – Matthew Shipp / Seraphic Light』

Daniel Carter (fl, tp, cl, ts, as, ss)
William Parker (b)
Matthew Shipp (p)

●ダニエル・カーター
マシュー・シップ『Not Bound』(2016年)
トッド・ニコルソン+ニューマン・テイラー・ベイカー+ダニエル・カーター@6BC Garden(2015年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、03年)

●ウィリアム・パーカー
スティーヴ・スウェル・トリオ@Children's Magical Garden(2017年)
ウィリアム・パーカー+クーパー・ムーア@Children's Magical Garden(2017年)
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ウィリアム・パーカー『Live in Wroclove』(2012年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年) 

●マシュー・シップ
マシュー・シップ『Not Bound』(2016年)
マシュー・シップ『Piano Song』(2016年)
ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(2014年)
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年) 


パトリック・シロイシ『Bokanovsky’s Process』、『Tulean Dispatch』、『Kage Cometa』(JazzTokyo)

2018-07-01 00:57:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

パトリック・シロイシ『Nakata / Bokanovsky’s Process』、『Patrick Shiroishi / Tulean Dispatch』、『Fujioka, Shiroishi, Casanova / Kage Cometa』。

>> #1531 パトリック・シロイシの近作3枚『Nakata / Bokanovsky’s Process』、『Patrick Shiroishi / Tulean Dispatch』、『Fujioka, Shiroishi, Casanova / Kage Cometa』


「JazzTokyo」のNY特集(2018/7/1)

2018-07-01 00:45:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」誌のNY特集、Jazz Right Now(2018/7/1)。いろいろあって3か月ぶり。

■ 連載第30回 ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 チャド・テイラー、アナイス・マヴィエル

チャド・テイラー『Myths and Morals』、アナイス・マヴィエルのパフォーマンスについて。

■ ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま 第23回 ラス・ロッシング〜 ケーデンスとの駆け引き、ある瞬間の美〜

蓮見令麻さんの連載。素晴らしいピアニスト、ラス・ロッシングについて。

●Jazz Right Now
「JazzTokyo」のNY特集(2018/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2018/1/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/12/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/8/1)

「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/3/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/2/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/10/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/8/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/6/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/1/31)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/12/27)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/11/21)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/10/12)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2015/7/26)