Sightsong

自縄自縛日記

西島芳 triogy@本八幡cooljojo

2018-07-17 07:50:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojoで、西島芳のtriogy(2018/7/16)。

triogy:
Kaori Nishijima 西島芳 (p, vo)
Hiroshi Yoshino 吉野弘志 (b)
Yoshinori Shiraishi 白石美徳 (ds)

この3月に下北沢のApolloで観て素晴らしかったこともあり、5月にもと思っていたのだが、タイミング悪くわたしが入院してしまった。そんなわけで4か月ぶり、また観ることができてとても嬉しい。

西島さんの音楽には、淡い光の中で静かに佇むような独特な世界を垣間見ることができる。時間のあわいを大事に取り出したような感覚である。それがたとえば「Dawn」であり、西島さんの囁きと白石さんのブラシとが重なって何とも言えない夢現のサウンドが出来上がっていた。「Where is my dream?」「hard to remember」と歌っていたように。

「Evening」での魅力的なピアノの和声、「つばめ」での遠くなったり近づいたりする濃淡、「大きな魚」でのヴォイスとピアノとの気持ちよい重なりと微妙なズレなんかも良かった。

またそればかりではなく、「Bran New Cubic」や「ものすごく速いらしいクルマ」ではスピーディーに飛ばし、吉野さんの良い音のベースも、あまり大きな音を好まないらしい白石さんのドラムスも、ここではサウンドを駆動して、他の曲とのコントラストで目が醒めるようだった。先日のApolloでは、休憩時間にキース・ジャレットのスタンダーズ(たしか『Standards in Norway』)が流されていて、西島さんが「スポーツカーのよう」と表現していたことを思い出した。キースとは異なるピアノトリオのサウンドではあるけれど。

吉野さんのベースにはいつもながらに実に味がある。ライヴで歌うことはないが、声もそうであり、無関係ではないに違いない。

こんどの東京でのライヴは9月19-21日、triogyとtrio SONONI(Apolloと新宿ピットイン)。なんとか駆けつけようと思っている。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●西島芳
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
西島芳アンサンブル・シッポリィ『Very Shippolly』(2017年)

●吉野弘志
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
向島ゆり子『Right Here!!』(1995-96年)
ジョセフ・ジャーマン

●白石美徳
西島芳 triogy@下北沢Apollo(2018年)
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)


大井町フィールドワーク

2018-07-17 06:47:45 | 関東

いつも蒲田ばかりで下車していると目が曇ってしまう。そんなわけで、週末に大井町の初フィールドワークを敢行した(呑むだけ)。同行者のおふたりもこの近くとは言え蒲田ほど詳しくはない様子で、出てくる言葉は大井武蔵野館とかそんな昔話くらい。

自分もはじめてだと思い込んでいたのだが、よく考えると、ニコンの大井製作所には光学ガラスを作った伝説的な坩堝があり、何度か訪問して敷地内に入ったことがあった。いまだに熱狂的なファンはここを聖地とみなす(『科学の眼 ニコン』)。工場前は「光学通り」である。わたしは銀塩はペンタックスとライカ、ニコンにはあまり縁がなかった。

駅を出るとまずは東側の「東小路」とその先の「すずらん通り」、「平和小路」を散策する。比較的まっすぐではあるが、狭くて横丁に入るとよくわからなくなりそうな作りである。共同便所もある。藤木TDC『東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く』によると、ここが建物疎開地にできた貴重なヤミ市跡ということである。

まずは東小路の入り口にある「牛タンいろ葉」で、柔らかい名物の茹でタン、それからポテサラやいぶりがっこ(クリームチーズと蜂蜜を付けて食べる)。塩レモンサワーは普通のレモンサワーのようだが、実はよく混ぜないと塩が底のほうに沈んでいる。かなり賑わっている。店員さんがなかなか来てくれずテーブル上の懐かしいくじ引き器を見ると、上に呼び出しボタンなどが付いていた。新タイプなのだった。

同じ東小路にある中華料理の「永楽」にも、多くの客が入っており、外には空くのを待っている人さえもいた。日曜日ゆえ閉まっている店が多いからでもあるようで、残念ながら、人気店の「肉のまえかわ」もシャッターを下ろしていた。

右往左往した挙句に、洋食をつまみながら呑むのも悪くはないだろうという結論に達し、平和小路の「ブルドック」に入った。すっかり暗くなり、このごちゃごちゃした雰囲気で気分が高まる。ショーケースのサンプルはアレだが、店内は古くはあっても綺麗にしてある。野菜が必要だろうと頼んだミックスサラダが想定外の逸品で、次々に箸が伸びた。また巨大なメンチカツはしつこくはなく、あっさりと食べられた。再訪決定。

もう1軒と食べログ検索したところ、沖縄料理の店が界隈に3軒ある。しかし、そのうち「アランチャ」というバーはどうも姿を消しているようだった。そんなわけで、西側の大井町線ガード下に並ぶ商店街「大井サンピア商店街」を歩き、道を渡ったところにある「沖縄の味 ぶがりの~し」に入った。隣の「南風 どなん」は臨時休業だった。

『東京戦後地図 ヤミ市跡を歩く』によれば、「大井サンピア商店街」は実はかなり長い歴史を持つ。1927年に「目黒蒲田電鉄線」として開業したときから、国鉄大井工場(いまのJRの車両センター)の労働者をターゲットとした商店街だったという。いま並ぶのは新しい店が多いようだったが、活気があることは間違いない。

なお、西口の大きなイトーヨーカドーの敷地に、多くの飲食店(大井新地のマーケット)があったようである。

「若い頃、あのあたりを歩くと、呼び込みの化粧の濃いオネエサンに『どこいくの?』なんてからかわれて、お尻をポンと叩かれたりしてね」。(フリート横田『東京ヤミ市酒場』

「ぶがりの~し」では、島豆腐と島らっきょう。泡盛の種類は多く、貴重な泡波も置いてあった。高いから次の機会に。