Sightsong

自縄自縛日記

マカヤ・マクレイヴン@ブルーノート東京

2018-07-11 07:44:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルーノート東京で、マカヤ・マクレイヴンを観る(2018/7/10、2nd)。

Makaya McCraven (ds)
Greg Ward (as)
Matt Gold (g)
Junius Paul (bass g)

というのも、マクレイヴンの『Highly Rare』がかなりカッコいい傑作だったし、それがいまのシカゴの動きのひとつだとすれば観ないわけにはいかないからだ。ベースギターのジュニアス・ポールは、ロスコー・ミッチェル『Celebrating Fred Anderson』でも個性的な音を出しており、他にも故フレッド・アンダーソンやカヒル・エルザバーとも共演していたりする。かれもまたシカゴの精鋭ということか。

この日の曲は、『Highly Rare』やその前の『In The Morment』の収録曲、またアイドルだったというトニー・ウィリアムスのチューンなど。

とても印象的だったのはサウンド全体のつくりである。伝統的なジャズが譜面の時間軸に沿った進行であり、全体を見渡しつつ曲や時間やバランスの枷を意識しつつ自分の音を出すというものだとして、かれらのサウンドは、すでに全体が地図となっているように思えた。曲がコンター付きの地図であり、それが精細であろうとなかろうと、メンバーは既に全体像を鳥瞰できている。その地図の上で出口に向かってルートを辿ってゆき、自由も個性も発揮する感覚。

したがって、「この小節でソロという見せ場を発揮する」決め事よりも次元の軸が増えており、複雑な曲の中で全員が複雑なルールをこなしているように聴こえるのも、グレッグ・ウォードのサックスが一聴その中に埋没しているように感じられるのも、それと無関係ではない。しかし、決してつまらなくはない。むしろ多次元世界の音楽住人たりえている姿がとても面白かった。

マクレイヴンのビートはちょっと変わっている。大汗は流すけれど、従来のドラマーが盛り上げるために組み立てるあり方とは明らかに違っていて、隙間も多く、大きな流れの一部でありつつどこからでも始められる分散型でもあった。また電子ドラムのように聴こえたりもして、かつてトニー・ウィリアムスが遊びで試行的に使ったものがこのようなハイパーな世界へと展開したという見方もあるのかも知れないなと思った。

ジュリアス・ポールのベースギターは、終始カッチョいいグルーヴを作り出していた。やはり今後も注目。

最後に、マカヤの父スティーヴン・マクレイヴンに捧げる曲が演奏された。実はかれらが父子だなんてこの日の朝はじめて気が付いた。20年くらい前に、アーチー・シェップとともに来日したスティーヴンに、サインをもらったことがある。演奏後、そのCDをマカヤに見せるとすごく喜んで、自分のCDと並べてスマホで写真を撮ったりしていた。

●マカヤ・マクレイヴン
マカヤ・マクレイヴン『Highly Rare』
(2016年)