Sightsong

自縄自縛日記

キャノンボール・アダレイ『Inside Straight』

2018-07-28 23:57:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

キャノンボール・アダレイ『Inside Straight』(Fantasy、1973年)を聴く。オリジナル盤だけどカット盤。

Cannonball Adderley (as)
Nat Adderley (cor)
Hal Galper (el-p)
Walter Booker (b)
Roy McCurdy (ds)
King Errisson (perc)

アダレイ兄弟のサウンドはどれも濁っていてそれが良いところなのだが、マイルス・デイヴィスの作品でのキャノンボールに先に耳が馴れてしまうと、それが作品として洗練されていないように感じられる不幸がある(というか、わたしがそうだっただけなのだが)。

ここでも、もしゃもしゃした有機体の中から突然キャノンボールのアルトが飛び出てくることが何度もあって、悶絶しそうなくらいファンキーである。哄笑というか、神をも恐れないふてぶてしさというか、こんな音を出したアルトはキャノンボールくらいである。

そして、この文脈であればナットのコルネットもそれらしく響くというものだ。ハル・ギャルパーのエレピもまた時代的だが素敵である。いまこんな風に臭くもクールにもキーボードを弾く人は誰なんだろうな。

●キャノンボール・アダレイ
ドン・チードル『MILES AHEAD マイルス・デイヴィス空白の5年間』(2015年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
チャールス・ロイドの映像『Arrows into Infinity』(2013年)
ユセフ・ラティーフの映像『Brother Yusef』(2005年)
ルイ・ヘイズ『Dreamin' of Cannonball』(2001年)
マニー・ピットソン『ミニー・ザ・ムーチャー』、ウィリアム・マイルズ『I Remember Harlem』(1981年、?)
キャノンボール・アダレイ『Somethin' Else』
(1958年)
ミルト・ジャクソンの初期作品8枚(1955-61年)


カンパニー『Fables』

2018-07-28 23:33:11 | アヴァンギャルド・ジャズ

カンパニー『Fables』(Incus、1980年)を聴く。

Dave Holland (b)
George Lewis (tb)
Evan Parker (ss, ts)
Derek Bailey (g)

見るからに凄いメンバーだが演奏も凄い。

特にA面2曲目の「ATG 6」では文字通り4人それぞれが自身の音を研ぎ澄ませ、それが周囲に対して体をじわじわと互いに入れ替える、驚くほどのテンションが平然と展開されている。3曲目の「ATG 3」はジョージ・ルイス、エヴァン・パーカー、デレク・ベイリーが共通の時空間で遊び、その中心でデイヴ・ホランドが特有の躍るようなピチカートを聴かせる。弓弾きでもホランドが軸にあって、それがために、他の三者が自在に遊泳できているようである。

次第にベイリーの音が刺すように存在感を増してくる。ベイリーはB面1曲目の「ATG 13」でもしなやかで強い金属音を出している。同時期の『Aida』に匹敵する迫力である(『Aida』の録音が1980年7-8月、本盤はそれに先立つ5月)。

そして気が付くとルイス、ホランド、パーカー、ベイリーの誰かに耳を奪われている。この公平な関係によるインプロは、力量が同等でなければ実現しないだろう。3曲目でのパーカーとルイスとの競争的狂騒的な絡み合いも良いが、これは10分間の中の一場面でしかないのだ。

●デイヴ・ホランド
『Aziza』(2015年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
デイヴ・ホランド+ペペ・ハビチュエラ『Hands』(2010年)
デイヴ・ホランドの映像『Jazzbaltica 2003』(2003年)
ケニー・ホイーラー+リー・コニッツ+デイヴ・ホランド+ビル・フリゼール『Angel Song』(1996年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)
スティーヴ・コールマン+デイヴ・ホランド『Phase-Space』(1991年)
カール・ベルガー+デイヴ・ホランド+エド・ブラックウェル『Crystal Fire』(1991年)
デイヴ・ホランド『Conference of the Birds』(1973年)

●デレク・ベイリー
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
デレク・ベイリー晩年のソロ映像『Live at G's Club』、『All Thumbs』(2003年)
デレク・ベイリー『Standards』(2002年)
ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る(2001年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
デレク・ベイリーvs.サンプリング音源(1996、98年)
デレク・ベイリー+ルインズ『Saisoro』(1994年)
田中泯+デレク・ベイリー『Mountain Stage』(1993年)
1988年、ベルリンのセシル・テイラー(1988年)
『Improvised Music New York 1981』(1981年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、91、98年)
デレク・ベイリー『New Sights, Old Sounds』、『Aida』(1978、80年)
カンパニー『Fictions』(1977年)
『Derek Bailey Plus One Music Ensemble』(1973、74年)
ジャズ的写真集(6) 五海裕治『自由の意思』
トニー・ウィリアムスのメモ

●エヴァン・パーカー
エヴァン・パーカー@稲毛Candy(2016年)
エヴァン・パーカー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2016年)
エヴァン・パーカー@スーパーデラックス(2016年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)

Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
マット・マネリ+エヴァン・パーカー+ルシアン・バン『Sounding Tears』(2014年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
エヴァン・パーカー+ジョン・エドワーズ+クリス・コルサーノ『The Hurrah』(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ノエル・アクショテ+ポール・ロジャース+マーク・サンダース『Somewhere Bi-Lingual』、『Paris 1997』(1997年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』(1985年)
エヴァン・パーカー『残像』(1982年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)

●ジョージ・ルイス
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
ギル・エヴァンスの映像『Hamburg October 26, 1986』(1986年)
『A POWER STRONGER THAN ITSELF』を読む(1)
ムハール・リチャード・エイブラムスの最近の作品


オーネット・コールマン『Trio Live / Tivoli Koncertsalen Copenhagen 1965』

2018-07-28 23:17:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

オーネット・コールマン『Trio Live / Tivoli Koncertsalen Copenhagen 1965』(Hi Hat、1965年)を聴く。

Ornette Coleman (as, tp, vln)
David Izenzon (b)
Charles Moffett (ds)

このメンバーによるトリオは1961年に結成され、1962年に『Town Hall 1962』、1965年に『Chappaqua Suite』や『Golden Circle』、1966年に『Who’s Crazy?』(映像作品が『David, Moffett and Ornette』)を吹き込んでいる。本盤はそのゴールデン・サークルのわずか数日前の演奏である。

冒頭の「Lonely Woman」ではデイヴィッド・アイゼンソンとチャールス・モフェットとが小刻みに不穏なムードを作っていき、その中でオーネットがアルトを吹く。これを聴くと、アイゼンソンのトーンの豊富さはやはり特別なものだったことがわかる。モフェットの手癖も嬉しい。ただ、オーネットのブロウの緊張感はゴールデン・サークルのそれに遠く及ばない。数日間でテンションを上げる何かがあったのだろうか。

そのことは2曲目の「Clergyman’s Dream」でも明らかで、モフェットのやり過ぎのプレイに対する観客の笑いが聴こえる。ゴールデン・サークルほどサウンドが張り詰めていればそんなことは起きないはずである。

『Town Hall』で演奏した「Sadness」ではようやく息を呑むような時間が訪れる。抑制したオーネットのアルトは、ブルージーに奇妙に飛翔するプレイと同様に快楽の源である。最後の「Falling Star」におけるアイゼンソンとオーネットのヴァイオリンとの軋み合いはなかなかの聴き物。

●オーネット・コールマン
オーネット・コールマン『Waiting for You』(2008年)
オーネット・コールマン『White Church』、『Sound Grammar』(2003、2005年)
オーネット・コールマン&プライム・タイム『Skies of America』1987年版(1987年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 再見(1985年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 オーネット・コールマンの貴重な映像(1985年)
オーネット・コールマン『Live at Teatro S. Pio X 1974』(1974年)
オーネット・コールマン『Ornette at 12』(1968年)
オーネット・コールマンの映像『David, Moffett and Ornette』と、ローランド・カークの映像『Sound?』(1966年)
スリランカの映像(6) コンラッド・ルークス『チャパクァ』(1966年)
オーネット・コールマン『Town Hall 1962』(1962年)
オーネット・コールマンの最初期ライヴ(1958年)
オーネット・コールマン集2枚(2013年)


マーク・リボー(セラミック・ドッグ)@ブルーノート東京

2018-07-28 22:58:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルーノート東京で、マーク・リボーのセラミック・ドッグ(2018/7/24、2nd)。

Marc Ribot (g, vo)
Shahzad Ismaily (b, perc, key, vo)
Ches Smith (ds, electronics, vo)

演奏は「You Still Here?」から始まった。マーク・リボーのソロに続き、じわじわとシャザード・イズマイリーのベース、チェス・スミスのブラシが入ってくる。「Why you still here?」と繰り返す寂寞とした感覚。

スミスのブラシの圧にはいきなり感銘を受けたのだが、その音圧という点では、スティックも手もバスドラムも一様に張り皮が破れんばかりに強靭でありさらに驚いた。昨年観た、ティム・バーンのスネイクオイルにおけるクールなプレイとはまったく異なっている。スネイクオイルでは打楽器とヴァイブとを同じ土俵に持ってきたのに対し、ここでは打楽器のさまざまなパルスが土俵上に並べられている。ドラムセットのかなり上方に、モスクのミナレットのように2つのシンバルが配されており、跳躍でもするのかと思っていたのだが、そこは背の高いスミス、何の問題もなく同じ強さで叩きまくっている。曲が変わり、スミスとイズマイリーとはまるで和太鼓兄弟のように叩き合い、続く「Pennsylvania 6 666」では手で叩く。ロックというか、これはすべて手の内を明かした上で想像を上回るパフォーマンスを見せてくれるプロレスか。

イズマイリーのベースはちょっと不思議であり、シームレスに一筆書きの曲線を描き続ける。そして主役リボーが高速のかっちょいいギターソロを披露すると、客はみな来た来たと言わんばかりに彼を凝視し顔を勝手に笑わせていた。熱くもクールにもロックと想いとで攻めまくるリボー、やはり旧世代の素晴らしい音楽家なのだった。

この想いの中で、体制や権力は執拗に否定され解体される。その対象は、「I don’t accept」「I refuse」「I resist」の後に付けられていた。単純なpoliticsもあれば、youやmy faceもある。リボーもあなたもわたしも、視線から逃れうる治外法権エリアにはいられないのだ。レヴィナスか。

●マーク・リボー
マーク・リボー(セラミック・ドッグ)『YRU Still Here?』(-2018年)
ロイ・ナサンソン『Nearness and You』(2015年)
マーク・リボーとジョルジォ・ガスリーニのアルバート・アイラー集(2014年、1990年)
ジョン・ゾーン『Interzone』 ウィリアム・バロウズへのトリビュートなんて恥かしい(2010年)
製鉄の映像(2)(ジョゼフ・コーネル『By Night with Torch and Spear』(1940年代))

●チェス・スミス
マーク・リボー(セラミック・ドッグ)『YRU Still Here?』(-2018年)
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
マット・ミッチェル『A Pouting Grimace』(2017年)
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
マット・ミッチェル『Fiction』(-2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)