成城学園前のアトリエ第Q藝術に足を運び、竹田賢一さんの古稀記念ライヴ(2018/7/17)。
Kenichi Takeda 竹田賢一 (大正琴, vo)
フライヤーにある「70枚の貝殻」とは平田俊子の詩から取ったのだという。竹田さんは、それよりも「70体の亡きがら」にすればよかったなと話す。(あとで本にサインを頂いたが、竹田さんは「70体の亡きがらをかつぎ出せ!」と書いた。)
なんにせよ初めて目の当たりにする竹田さんの演奏である。2日前に大井町で呑んでいて今回お誘いくださった編集者のMさんから、昨年、A-Musikのライヴがあるぞとのお誘いをいただいたのだが、その時はつい他の若い人の演奏を観に行ってしまいあとで後悔したのだった。(千野秀一さんが帰国するタイミングでないと実現しないのだ。)
そんなわけで、いきなり大正琴の音にのけ反る。沖縄民謡を思わせもするが何の曲だろう。左手で鍵盤を押さえ、右手でピックを激しく弾き、その音が奇妙な自律性をもってコントロール外となり、演奏する竹田さんとは別のものとしてそこに存在するような感覚がある。ときどき低音でサウンドが押さえられ、こわばったものが解体される。
さまざまな曲。「アカシアの雨がやむとき」みたいだなと思っていたらそれは鳥取の「貝殻節」。アウシュビッツ収容所で死んだイルゼ・ウェーバーが残した子守歌。「'Round Midnight」。いくつものシチリアーナ(バッハもピアソラも)。竹田さんは「素面では聴いていられないから酒を呑んでください」とおっしゃっていたが、呑んでも呑まなくても時間と重力が妙な按配になっただろう。
良い時間だった。前から読もうと思っていた『地表に蠢く音楽ども』も入手できた。
●竹田賢一
A-Musik『e ku iroju』(1983年)