Sightsong

自縄自縛日記

現代三味線デュオ『弦発力』(斎藤僚太、ヨシュア・ヴァイツェル)

2018-07-14 08:30:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

現代三味線デュオ『弦発力』(Kendra Steiner Editions、2016-17年)を聴く。

Ryota Saito 斎藤僚太 (shamisen)
Joshua Weitzel (shamisen)

これまでのヨシュア・ヴァイツェルのライヴやCDを聴くと、三味線の音を、三味線の伝統的な文脈を出発点としてではなく、最初から越境を視野に入れて模索してきたことがわかる。

本盤もただの三味線のデュオではない。いきなりのホワイトノイズ、これは何だ? 吹いているのか、弦を擦っているのか? 擦っているとして、それは人力で? その意思が隠されている音の横で、撥で弾き叩くことによる独特の三味線成分が放出されている。それは揺らぎであり、倍音であり。

しかし、音の拡張はそれにとどまらない。やがて、明らかに電動の道具が弦を擦り弾く展開となる。やはりその横で通常の三味線の音が出されているのだが、三味線コンテキストから言えば異常事態が発生しているからこそ、三味線の三味線性が浮かび上がってくる。そしてまた、通常とはいっても通常ではない。ふたりの触手は、揺らぎ、軋み、不均一といった周辺領域に伸び続ける。

刺激的な越境音楽である。ドイツ・カッセルから来日中のヴァイツェルはこのデュオもやるそうなので(7/21、Ftarri)、いくつもの疑問を抱えて観に行こうと思っている。

●ヨシュア・ヴァイツェル
二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+アルフレート・23・ハルト+竹下勇馬@Bar Isshee
(2017年)
大城真+永井千恵、アルフレート・23・ハルト、二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+中村としまる@Ftarri
(2017年)
ウルリケ・レンツ+ヨシュア・ヴァイツェル『#FLUTESHAMISEN』(2016年)


佐藤浩一+福盛進也@神保町試聴室

2018-07-14 07:40:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

神保町試聴室で、佐藤浩一と福盛進也のデュオ(2018/7/13)。

Koichi Sato 佐藤浩一 (p)
Shinya Fukumori 福盛進也 (ds)

佐藤浩一もスーパーなピアニストである。「も」って何だ。佐藤浩一は唯一性のあるスーパーなピアニストである。

誰もが実力を知るかれと、ECMからリーダー作を出した福盛進也とのはじめてのデュオという企画。インパクトがあったのか、神保町試聴室には30人近くの人が集まり椅子が埋まった。

この日の演目はふたりのオリジナルばかり。そしてふたりの音楽的な相性は良さそうである。従って、ふたりとも、完全に自分の領域内で演奏を繰り広げた(かなり長く、50分くらいを2セット)。福盛進也のシンバルもブラシもかなり繊細で、リズムも強度もスピードも自在、楽器が鳴る音をとても大事にしており、それを無理に意思で突破することはない。佐藤浩一のピアノはタッチが柔らかく、やはりピアノを手段として自己を無理に露出させることはない。実のところ、その巧みなプレイが特定の領域内であることに不満がなくはない。

●佐藤浩一
本田珠也『Ictus』(2017年)
小沼ようすけ+グレゴリー・プリヴァ、挟間美帆 plus 十@Jazz Auditoria(2017年)
rabbitoo@フクモリ(2016年)
rabbitoo『the torch』(2015年)
福冨博カルテット@新宿ピットイン(2015年)
安ヵ川大樹『神舞』(2012年)