現代三味線デュオ『弦発力』(Kendra Steiner Editions、2016-17年)を聴く。
Ryota Saito 斎藤僚太 (shamisen)
Joshua Weitzel (shamisen)
これまでのヨシュア・ヴァイツェルのライヴやCDを聴くと、三味線の音を、三味線の伝統的な文脈を出発点としてではなく、最初から越境を視野に入れて模索してきたことがわかる。
本盤もただの三味線のデュオではない。いきなりのホワイトノイズ、これは何だ? 吹いているのか、弦を擦っているのか? 擦っているとして、それは人力で? その意思が隠されている音の横で、撥で弾き叩くことによる独特の三味線成分が放出されている。それは揺らぎであり、倍音であり。
しかし、音の拡張はそれにとどまらない。やがて、明らかに電動の道具が弦を擦り弾く展開となる。やはりその横で通常の三味線の音が出されているのだが、三味線コンテキストから言えば異常事態が発生しているからこそ、三味線の三味線性が浮かび上がってくる。そしてまた、通常とはいっても通常ではない。ふたりの触手は、揺らぎ、軋み、不均一といった周辺領域に伸び続ける。
刺激的な越境音楽である。ドイツ・カッセルから来日中のヴァイツェルはこのデュオもやるそうなので(7/21、Ftarri)、いくつもの疑問を抱えて観に行こうと思っている。
●ヨシュア・ヴァイツェル
二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+アルフレート・23・ハルト+竹下勇馬@Bar Isshee(2017年)
大城真+永井千恵、アルフレート・23・ハルト、二コラ・ハイン+ヨシュア・ヴァイツェル+中村としまる@Ftarri(2017年)
ウルリケ・レンツ+ヨシュア・ヴァイツェル『#FLUTESHAMISEN』(2016年)